私には印税が入らないこと。
『shooting stars』は買い切りだったこと。
それでも、ミリオンを達成したお礼がしたいと、みんなが話し合ってくれていたこと。
そして、私が帰ったあとに、みんなで作曲の機材一式をプレゼントしようと決めてくれていたことも。
「あと、五万って安すぎ!」
次の瞬間、セナ君からまさかのデコピン。
思わず額を押さえる。
「だって……私は実績も何もないし……」
ただ、みんなのことを思って曲を作っただけなのに。
そんな気持ちが口からこぼれる。
「だって、じゃねぇ。デビュー曲以上に売れた曲って初めてなんだぜ。しかもオレたちにとっても初のミリオン」
そう言いながら、セナ君がやさしく私の頭に手を置く。
さっきのデコピンと同じ手とは思えないくらい、あたたかくて、やわらかい。
「お前のおかげなんだ。もっと誇れよ」
その言葉がうれしくて、目が潤む。
離れていく手が名残惜しくて、渡されたボールペンを急いで握り直した。
ああ、こんなふうに言ってもらえるんだ。
私が作った曲のことを、自分のことみたいに誇ってくれるんだ。
それが、たまらなくうれしい。
「あ」
黙っていたセナ君が、何かに気づいたように店員さんへ話しかける。
「あの、こいつ多分セッティングできないと思うんで、配送と一緒にお願いできますか?」
「可能ですよ。お日にちのご希望はございますか?」
セナ君がスマホを確認する。
「学校終わって家にいんのって六時くらい?」
「あ、うん。何もなければそれくらいには家にいるかも」
「じゃ、ちょっと時間開くけど五日後の六時にお願いします」
不思議に思って彼を見ると、さらっとこう言った。
「オレも立ち会うから」
「業者さんがいれば大丈夫だよ?」
「お前だけだと危なっかしいし。ほら、会計すっから向こうでも見てこい」
なんだか、無理やりごまかされた気がする。
立ち会うって、そんなに当たり前みたいに言うことなのかな。
でも問い返す前に、セナ君はもう店員さんと話し始めてしまっていた。
お店を出ると、セナ君が腕時計を見てタクシーを探し始める。
「オレこれから雑誌の打ち合わせと撮影で行かないとなんだ。送ってやれなくてわりぃけど、タクシーで帰ってくれる?」
「え? 電車で帰るよ!?」
私の声を無視して、空車のタクシーを止めてくれる。
「学校に行くのに毎日電車に乗ってるのに」
「……本当は電車なんか乗せたくねーよ」
「ぷっ。何それ。私、何にもできない女子みたいじゃん」
そう笑って返したのに、セナ君はぜんぜん笑わなかった。
「いんだよ。何にもできなくて。お前が好きな曲を、オレらの曲を、隣で笑って作ってくれてればさ」
その言葉に、胸の奥が一気に熱くなる。
好きな曲を。
オレらの曲を。
隣で笑って。
たったそれだけの言葉なのに、どうしてこんなに甘いんだろう。
どうしてこんなに、ずるいんだろう。
そう言って、財布から一万円を取り出し、運転手さんに渡す。
「じゃ、こいつよろしくお願いします」
「……あ、セナ君!」
「またな」
ドアが閉まり、タクシーが走り出す。
後ろを振り返ると、手を上げてるセナ君が少しずつ小さくなっていった。
まだ十二時。
たった二時間しか経っていないのに、頭の中はジェットコースターに乗ったみたいで、全然追いつかない。
機材のこと。
ミリオンのこと。
頭を撫でられたこと。
立ち会うって言われたこと。
最後の、あの一言。
いろんなものがぐるぐる回って、落ち着く気配がない。
まだ、セナ君の車の匂いが自分に残ってる気がした。
腕を抱くみたいにそっと自分の肩へ触れて、またひとりで顔が熱くなる。
「今度……なんの香水か聞いてみようかな……」
『shooting stars』は買い切りだったこと。
それでも、ミリオンを達成したお礼がしたいと、みんなが話し合ってくれていたこと。
そして、私が帰ったあとに、みんなで作曲の機材一式をプレゼントしようと決めてくれていたことも。
「あと、五万って安すぎ!」
次の瞬間、セナ君からまさかのデコピン。
思わず額を押さえる。
「だって……私は実績も何もないし……」
ただ、みんなのことを思って曲を作っただけなのに。
そんな気持ちが口からこぼれる。
「だって、じゃねぇ。デビュー曲以上に売れた曲って初めてなんだぜ。しかもオレたちにとっても初のミリオン」
そう言いながら、セナ君がやさしく私の頭に手を置く。
さっきのデコピンと同じ手とは思えないくらい、あたたかくて、やわらかい。
「お前のおかげなんだ。もっと誇れよ」
その言葉がうれしくて、目が潤む。
離れていく手が名残惜しくて、渡されたボールペンを急いで握り直した。
ああ、こんなふうに言ってもらえるんだ。
私が作った曲のことを、自分のことみたいに誇ってくれるんだ。
それが、たまらなくうれしい。
「あ」
黙っていたセナ君が、何かに気づいたように店員さんへ話しかける。
「あの、こいつ多分セッティングできないと思うんで、配送と一緒にお願いできますか?」
「可能ですよ。お日にちのご希望はございますか?」
セナ君がスマホを確認する。
「学校終わって家にいんのって六時くらい?」
「あ、うん。何もなければそれくらいには家にいるかも」
「じゃ、ちょっと時間開くけど五日後の六時にお願いします」
不思議に思って彼を見ると、さらっとこう言った。
「オレも立ち会うから」
「業者さんがいれば大丈夫だよ?」
「お前だけだと危なっかしいし。ほら、会計すっから向こうでも見てこい」
なんだか、無理やりごまかされた気がする。
立ち会うって、そんなに当たり前みたいに言うことなのかな。
でも問い返す前に、セナ君はもう店員さんと話し始めてしまっていた。
お店を出ると、セナ君が腕時計を見てタクシーを探し始める。
「オレこれから雑誌の打ち合わせと撮影で行かないとなんだ。送ってやれなくてわりぃけど、タクシーで帰ってくれる?」
「え? 電車で帰るよ!?」
私の声を無視して、空車のタクシーを止めてくれる。
「学校に行くのに毎日電車に乗ってるのに」
「……本当は電車なんか乗せたくねーよ」
「ぷっ。何それ。私、何にもできない女子みたいじゃん」
そう笑って返したのに、セナ君はぜんぜん笑わなかった。
「いんだよ。何にもできなくて。お前が好きな曲を、オレらの曲を、隣で笑って作ってくれてればさ」
その言葉に、胸の奥が一気に熱くなる。
好きな曲を。
オレらの曲を。
隣で笑って。
たったそれだけの言葉なのに、どうしてこんなに甘いんだろう。
どうしてこんなに、ずるいんだろう。
そう言って、財布から一万円を取り出し、運転手さんに渡す。
「じゃ、こいつよろしくお願いします」
「……あ、セナ君!」
「またな」
ドアが閉まり、タクシーが走り出す。
後ろを振り返ると、手を上げてるセナ君が少しずつ小さくなっていった。
まだ十二時。
たった二時間しか経っていないのに、頭の中はジェットコースターに乗ったみたいで、全然追いつかない。
機材のこと。
ミリオンのこと。
頭を撫でられたこと。
立ち会うって言われたこと。
最後の、あの一言。
いろんなものがぐるぐる回って、落ち着く気配がない。
まだ、セナ君の車の匂いが自分に残ってる気がした。
腕を抱くみたいにそっと自分の肩へ触れて、またひとりで顔が熱くなる。
「今度……なんの香水か聞いてみようかな……」
