愛なんて要らないから



「俺はさ、どんなに頑張っても、悠くんの美羽ちゃんを想う気持ちには勝てないし、美羽ちゃんの中で悠くんを越える存在にはなれないってわかってる」

 蝶が飛んでいった先、目の前に広がる空と海の水面はキラキラと輝いている。

 穏やかに、だけど少し目を細めて眩しそうに海の方向をみつめる皓太さんの横顔も、それに負けないくらいキラキラと輝いて見えて、私は目が離せない。


「悠くんに勝ちたいとか、美羽ちゃんの一番の存在になりたいとか、そんなことは全く思っていなくて。ただ、これからの未来を美羽ちゃんと一緒に生きていけたらいいなとは思ってる」

 優しい皓太さんなら、きっと悠との思い出ごと受け入れてくれる。

 悠との思い出を受け入れて、一緒に進んでくれる、そんな気がした。だけど……。


「皓太さんは、自分のことをちゃんと見てくれる人と一緒にいた方がいいと思います。私は皓太さんを都合のいいように扱いたくありません」

「都合のいい男、でいいじゃん」

「……っ、」

 私は皓太さんと一緒にいても何も与えることが出来ないかもしれない。何も返すことができないかもしれないと思う。

 そんなの、皓太さんが幸せになれない。


「どうしようもなく寂しい時、泣きたくなった時、悠くんを追いたくなった時、そんな時にそばにいれたらそれでいい。それで美羽ちゃんが救われるなら、生きていてくれるならそれでいい」

「そんなの……っ」

「好きだから、それだけでいいんだよ」

 皓太さんの視線が私に移る。

 眼差しは優しいのに、真っ直ぐと向けられた視線からは皓太さんの意志の強さを感じて、胸がぎゅっと掴まれたような感覚になった。