愛なんて要らないから



 その後すぐに診察を受けて、目が覚めてから一時間程して、やっとその彼の正体を知ることができた。

 バタバタとしていた病室が少し落ち着いた頃、静かに病室に入ってきたのは……。


「皓太、さん……」

 私の顔を見て、柔らかく微笑む皓太さん。

 皓太さんは私のベッド脇の椅子に腰掛けると、真っ先に手を握ってくれた。

 優しく握られた手。優しい笑み。だけど、皓太さんの表情はどこかいつもと違う。


「もしかして、怒って、ますか?」

「……うん、怒ってる」

「ごめんなさい……」

 怒ってる、といいつつも、優しい笑みを崩さない皓太さんの顔を見ていると、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。


 前に皓太さんの親友の話を聞いていたのに、私は同じことをしてまた皓太さんを傷つけてしまった。

 悠と一緒にいられるならそれでいい、そんな自分勝手で愚かな考えをしてしまったことを、皓太さんの顔を見て初めて後悔した。


「美羽ちゃんに一つ、伝えなきゃいけないことがある」

 少し真剣な顔つきをした皓太さんの表情から、それはいい話ではないと察した。


「悠くんがさっき……美羽ちゃんが目を覚ます少し前に亡くなったよ」

「……そう、ですか」

 悠が……そっか。悠は、もう……。

 もう本当に悠に会えなくなってしまったんだ。