愛なんて要らないから



「ごめん……ごめんね……っ。もっと早くに会いにくればよかったね」

 萌ちゃんになんと言われようと、私はもっと早く悠に会いに来るべきだった。

 いくら後悔しても、謝っても、もう遅いけど。それでも謝らずにはいられなかった。


 静かに眠る悠の顔をみつめていると、病室に入ってきた看護師さんが妹さんに耳打ちをした。

「美羽さんごめんなさい、ちょっと呼ばれてしまったので少しだけ出ますね」

 それを聞いた妹さんは少し慌てた様子で病室から出ていった。


 悠と二人きりになった病室で、そっと悠の手を握るとその手は温かかった。

 当たり前だけど握り返してくれることはなくて、それでも私は悠の手をしっかりと握った。

 機械の無機質な音だけが響くこの病室で、悠はずっと私を待っていてくれたのだろうか。


「はる……本当にもう目を覚まさないの?」

 私の声は、もう悠には届かない。

 握っている手はこんなに温かいのに。身体はちゃんと生きているのに。

 ただ眠っているだけにしか見えないのに、もう目を覚ますことも、悠の声が聞けることもないだなんて。


「ねえ、いつもみたいに手を握ってよ」

 デートの時はたくさん手を繋いだよね。

 お互い中学生の頃から知っているから、なんだか恥ずかしくて照れ臭くて、手を繋ぐことも精一杯だったけど、それでもたくさんたくさん手を繋いだよね。

 でも、もう握り返してくれることはないんだ……。