拾い物を交番に届ける

 落とし物を拾ったので近くの交番へ行った。その交番にいた警官に渡す。警官は拾い物を持って交番の奥へ消えた。
 拾い物を警察に預けたら書類を渡されると聞いていたので、警官が現れるのを待っていたが、いつまで経っても姿を見せない。
 奥へ向かって「すみませ~ん」と大きな声で呼びかけていたら、交番の入り口の外に、自転車に乗った警官が現れた。
「何か御用ですか?」と自転車から降りた警官が訊いてきたので事情を説明すると、顔色が変わった。
「お待ち下さいね」と言って警官は交番の奥へ消えた。この警官は、すぐに戻ってきた。その手は預けた落とし物が握られている。
「拾ったのは、これですか?」
「はい」
「それでは、この書類にサインを」
 名前や住所その他の記載を確認してから書類を受け取る。帰り際に不満を述べる。
「さっきのおまわりさんに、注意して下さい。色々とお忙しいんでしょうけど、人を待たせすぎですよ」
 その警官は恐縮した。その表情が暗いので、気になって訊いてみた。
「あのおまわりさん、具合が悪いんじゃないですか? 動けなくなって奥の方で休まれているとか?」
 警官は背中越しの奥の方を振り返って言った。
「そうですねえ……この派出所から、動けないのかもしれませんねえ」
 急いでいたので、それ以上は会話せず交番を出た。後になって、その交番には警官の幽霊が出ると聞いた。そこでピストル自殺した警官の亡霊だと噂されていた。だが、調べた限りでは、そこで拳銃自殺した警官はいなかった。自転車に乗った警官が派出所前で轢き逃げに遭って死んでいたのは分かった。