これは果たして恋なのか。

「はい、二人の分。待たせてごめんね」

「え、いいのにー。ひなぴーってばイケメン」

春夏がおどけてお礼を言い、アイスを受け取った。私もそれに倣う。とりあえず一口齧った私は、思わず少し目を見開いた。

「この味…」

お、と雛菊がこっちを見た。
「試食したとき、みぞれが好きそうな味だなって。当たってた?」

なんでわかったんだろう。
三ヶ月ちょいで相手の好みがわかるのか。
「…うん。美味しい。ありがとう」

雛菊が笑った。王子様じゃない、けど明るくて、じめっけを吹き飛ばすような清々しい笑顔。


いつもの雛菊。私たちの雛菊だ。

さっきまでのモヤモヤが吹き飛ぶようになくなった。

私は何を悩んでいたんだろう。今は、この笑顔を見られるだけで十分だ。

「ひなぴー」
「ん?」

「わたし、ひなぴーと春夏が大事。この先、何があってもずっとこの気持ちが変わらない自信あるよ」

だから、今じゃなくていい。いつか、今よりずっと仲良くなったら、なんでも言い合えるような関係にしてほしい。


雛菊はわたしの言葉にきょとんとして、目を瞬いた。

ほんの一瞬、長いまつ毛が影を落とす。
形の良い口唇が、かすかに動き、音を発した気がした。


ーーそう言って、結局みんな離れていくんだよなぁ。


「え、なんか言った?」
「わたしもだよって言った!来年も再来年も、卒業しても一緒にいようね」

雛菊はにっこり笑う。

わたしはそれだけで嬉しくなって、何も見えていなかった。何もわかっていなかった。

付近の資料の撮影を終えた雛菊の弟が、少し遠くから苦々しい表情で雛菊を見つめていた。