これは果たして恋なのか。

 今の姉弟として信頼し合って口喧嘩する関係も、もちろん心地いいし、父さんとも出会えてよかったと思っている。

でも時々考えてしまう。

もしも、違う場所で、ただの”同い年の男女”として出会えていたら。

 そうしたら、俺たちはどうなっていたのだろう。

「いやでも蒼、昨日久しぶりにわたしのこと名前で呼んだね」

 のほほんとした顔で痛いところを着いてくるな。

 とはいっても雛菊は"ルール”を知らない。こればっかりは悪気がないからしょうがないだろう。

「まぁ…多分もう呼ばねえ」

「なんでよ!‎うれしかったよ?なんだかまるで…」

雛菊は少し照れ、こそっと笑った。

「普通の同級生みたいな感じだったね」

愛しさがぶわっとこみあげた。

 やめろ。やめてくれ。こっちが必死に想いを抑えているというのに、どうしてお前はこじ開けようとしてくるんだ。

 あの頃の情愛が、蘇る。溢れ出してくる。

いや違う。抑えていただけで、ずっとそこにある。

 ふとした時の優しさ、いたずらっぽく笑う笑顔、優しいがゆえの臆病さ。それらが全て愛おしい。

意地悪なところも弱いところも丸ごと愛してる。

苦しみも悲しみも全部一緒に背負いたい。



 お前の気持ちは分かってる。俺に弟でいて欲しいんだろ。

わかっているけど。

それでもいつか、お前の唯一になりたいと思ってしまう俺は、きっとお前にとって一番の裏切り者なのだろう。