善人と言われる妹と、悪女と言われる私

「カサンドラ、もう僕は我慢ならない、お前みたいな悪女と婚約なんてやってられるか、家のための婚約に過ぎないから、私はお前の妹であるロクサーヌと婚約をすることにするぞ!」



 ……私にこんなことを言ったのは公爵家の跡取りであるアルフレッド様……


 私達の父である伯爵が、昔公爵を助けたことがあったらしく親友なので、その縁でこの婚約があったらしいのだが……



「きゃーアルフレッド様嬉しいですわ!」




 こんなことを言って抱き着いているのは我が妹のロクサーヌ……


 世間では気前がいい善人であると噂されていますわ……




「でカサンドラ何か言ったらどうだ?悪女とはいえ最後に何か言いたいことがあるのなら聞いてやろう!」




 ロクサーヌを抱きながら渾身のドヤ顔をするアフレッド様……


 いや脳内ですからもういいですね、アルフレッド……


 敬称をつける気すら失せたので……




「……婚約破棄は構いませんが、本当にロクサーヌでよろしいので?」




「……ついに頭までおかしくなったのか?悪女と名高いお前と、善良であると名高いロクサーヌ、どうしてお前を選ぶ理由があると言うのだ!」




「……仰る通りですね、では後悔しないといいですね」




 私は確信している、アルフレッドは絶対に後悔する。


 その時に助けてくれと言っても、私は悪女ですから、助けることはありませんことよ……




「最後の最後まで哀れな女だったな、負け惜しみならばもう少し上手にやるが良かったのに!」



 こうしてアルフレッドはロクサーヌを連れて行った……




 お父様である伯爵は勝手なことをしたアルフレッドに憤りはしたが、大人である公爵様が格上にも拘らず謝罪をしたので、これ以上は追及できず、当然家同士の関係は崩す気は無いので、そのままアルフレッドとロクサーヌの婚約が決まったのであった……



「カサンドラよ、こんなことになってしまうとは……」



「お父様が気にすることではありませんわ」



「だがロクサーヌを公爵家に入れるなんて、問題にしかならぬぞ!」




「……それは公爵様にお伝えしたのでしょう?」




「もちろん伝えたが、どうやら息子可愛さのあまり問題を重く捉えていないのだ……」



「……まぁなかなか分かりにくい話ですからね!」



「……私も恥故に、どうしても伝えにくいところもあったからな!」



「どんな会話を公爵様としたので?」




「まずは公爵殿も此度の事はこちらが申し訳ないと謝罪をしたのだ、故に私もそれ以上責めることができず、だがロクサーヌの問題点を挙げたのだ、だが公爵殿は、息子が良いと言った以上、さらに今さらそうだからといって、元に戻してくれなど言えまいと言って、受け入れてしまったのだよ……」




「……まぁ公爵様からしたら当然ですわね、でも絶対に後悔すると思いますわ、その時に、私はいくら何でも助ける気は一切ありませんことよ……」



「カサンドラにそうしろという気は無い」



「それを聞けて安心しましたわ……」




 言質は取りましたわ……私は悪女ですので、お人よしな行為をする気は一切無いので……





 さてしばらくするとアルフレッドとロクサーヌは結婚をして、良い妻であると言う評判が聞こえてきた……


 そうでしょうね……ロクサーヌは《《善人》》ですからね……




 そして私も新しい婚約者との結婚が決まり、残念ながら家柄は男爵家とずいぶん落ちたのですが、私の評判の悪さから仕方ないでしょう。


 ですがそれを除けば誠実な相手なので、私は十分ありがたいと思うのであった……



 そして男爵家に嫁いでからある日公爵家のパーティーに呼ばれ参加した所……




「アルフレッド様、もっと豪華なパーティーをすべきですわ!」


 こんなことを言うロクサーヌの声が聞こえてきた……



「……しかしだなロクサーヌ、あまり派手にしまくるのも……」



「何を言うのです、公爵家の立派な姿を見せてこそ他の貴族や民達が安心するのです!」



「そうは言っても……お金に限度というものが……」



「何を言ってるのですか!そんなことでは民や貴族に舐められてしまいますわ、それに評判さえ集めれば大丈夫なんです!」



「……だから民達に食べ物を分け与えているのか?」




「その通りです、これで公爵家は絶対に安定ですわ!」




 ……ああやはりロクサーヌは変わっていない。



 まるで家に無限にお金があるかのように思って、徹底的に浪費するのよ。


 本人はいいことに使っているつもりですが、その税収誰が払うと思っているのか……


 もちろん民ですわ、だから私はロクサーヌの行動を止めてケチに徹したから、悪女何て呼ばれ、民に配るロクサーヌが善人などと噂された……


 でもね私が止めなかったら伯爵家の財政は破綻して、もっと税金が上がって将来地獄を見たのは民達なのよ……



 最初はお父様もロクサーヌの行動を暖かく見てたけど度が過ぎたことで目が覚めて、私の進言に従うようになった……



 アルフレッド、あなたはどうなのかしら?公爵様、いくら公爵家といえど無限の財宝は無いですよね?




 その後公爵家の財政が苦しいという噂が聞こえてきた。


 何故ならパーティーを開く回数、その豪勢さ、どんどん減っているから当然である。



 そして恐ろしい発言を聞いてしまったのであった……




「お金が無いですって?ならば税金を取ればいいのです!」



「だが、これ以上税収を上げたら反乱がおきてしまうぞ?」



「そんなことはありえません!そんな恩知らずなものがいたら皆殺しにすればいいのです!」



 こんな馬鹿なやり取りをしているアルフレッドとロクサーヌを見て、


 私はついに切れてしまった。


 ロクサーヌを思いっきりビンタした……


「な……お姉様なんで!?私にアルフレッド様を取られたこと根に持っていたの?」



「……違うわよ馬鹿なアルフレッドなんてどうでもいいの、でもね、あんたは民を皆殺しにしていい?そんな論外の馬鹿許すわけないでしょう!」



「はぁ?私はねぇ今まで散々民を助けてきたの、それなんだから税金を払うのは当然なのよ!」




「……民にそんな生活の余裕が無い事すら分からない馬鹿は貴族失格よ!」



「ふん貧乏男爵家に嫁いだお姉様はもう脳内まで平民になったみたいね、私はね、貴族として公爵家の未来の婦人として、やることはやっているわ!」



 アルフレッドがまるで私に助けを求めるような顔をしてきたが無視してやった……



 ブリブリとロクサーヌはどこかにいったら、アルフレッドが私に話しかけてくる……



「ロクサーヌは度が過ぎるよ、何とか助けて欲しい」



「……悪女の私に頼むってプライドが無いのかしら?」



「そんなことを言っても、元婚約者だろう?」



「今の私は男爵家に嫁いだ妻、そんな昔の戯言は知りませんね」



「僕を恨んでいるのか?」



「筋の話よ、そんなに困るというのなら、ロクサーヌと離婚すればいいだけじゃない!」



「そんな酷いことを言わないでくれよ」



「甘ったれないで!仮にロクサーヌのせいで民が死んだりするようならば、私は遠慮なく王家に報告させて頂きます!」



「わ……分かった!何とかするよ!」





 しかしアルフレッドだけではどうにかならなかったが、公爵様がついに動いたらしい。



「伯爵殿、いくら貴殿との友好の証の結婚とは言え、ロクサーヌをアルフレッドではどうにかできまい、済まぬが離婚させて欲しい、そして姉妹揃って恥をかかせてしまった我々をどうか許して欲しい」


 とお父様に謝罪をしたらしい。


 公爵様ほどの真面目なお方が動きが遅れたのも、きっとアルフレッドの事で負い目があったからなのだろう……

 ですが民が犠牲にはなってないみたいで良かったですわ……



 ロクサーヌ……我々貴族の財源は無限じゃないし、平民から取り上げたものなのよ……


 それを自分の見栄のために使っていいものじゃないの……

 言っても理解しなかったですけどね……