クラスの端っこで、民訴ちゃんがクラスメイトのみらいちゃんと何やら楽しそうに会話を繰り広げていた。
「そう、それで手伝って欲しいの」
「いいよ任せて!」
二人は話し終えると、探偵団の他メンバーがいるところに近寄って来た。それに気がついた四人は顔を上げて民訴ちゃんの顔を見る。それに対して、みらいちゃんが事情を話し始めた。
「民訴ちゃんたちが法律探偵団やってるって聞いて、解決して欲しい悩みがあって、」
みらいちゃんがどこか恥ずかしそうにもじもじしながら、言葉を継いだ。
「私、かずきくんのことが好きで、どうしたらいいかなって」
「ていうことなんだけどみんないいかな?」
「え、それは全然事件じゃないし探偵団では……」
民法くんが断ろうとしたところで、後ろから刑法ちゃんが軽く彼の頭を叩き、身を乗り出した。
【刑法208条 暴行=不法な有形力の行使と定義され、実際に人を殴ったら暴行罪になることはほとんどの人が理解していると思う。しかしそれだけではなく、判例は①人に塩をまいた行為や、②車の幅寄せ行為等にも暴行罪を認定している。これに鑑みると、今回だけでなく今までのお話の中でも、刑法ちゃんや民法くんは既に暴行を犯していそう……
参考判例:①福岡高判昭和46年10月21日刑裁月報
3巻10号1311頁
②東京高判昭和50年4月15日刑裁月報7巻4号480頁】
「もちろん!!みらいちゃんの恋がどうやったら叶うか私達も一緒に考えるよ!」
「いいのかよ……」
「何でも解決でしょ!」
斯くして、法律探偵団一同によるみらいちゃんの恋愛解決プロジェクトが始まった。
放課後、みらいちゃんを公園のベンチに呼び、これまでの経緯を聞いていた。
「かずきくんは幼稚園の頃から一緒で、みんなに優しいの。かっこよくて、運動もできて。それにね、昔大人になったら私と結婚してずっと一緒に居てくれるって言ってくれたんだ。でも、かずきくんは人気者だから、最近他の子とも仲良くしてて、なんかもやもやする」
民訴ちゃんと刑法ちゃんが目を輝かせながら頷く。憲法ちゃんは鼻ちょうちんを作りながら下を向き、刑訴くんは地面のダンゴムシを眺めている。
「きゃー!ちっちゃい頃から結婚の約束なんて超ロマンチックじゃん」
「そんなのはやく告白して彼氏にしちゃいなよ!」
民訴ちゃんと刑法ちゃんが次々に思いを口にすると、みらいちゃんが少し眉を下げて困った顔をした。
「でも……もし告白してふられちゃったら。もうかずきと今までの関係で居られないかもしれない。そうなったら私、これからどうやって生きていけばいいかって考えると怖くて」
みらいちゃんが話し終えると、今まで難しい顔をしながら腕組をしていた民法くんが口を開いた。
「俺がちょっとかずきに聞いてみようか?時々話すし、好きな人いそうかどうかとかだけでも」
「それいいかも!」
刑法ちゃんが賛同し、それにみらいちゃんも納得した。
「じゃあ一旦明日それでやってみて、また報告ってことで」
言いながら、隣で寝ている憲法ちゃんの鼻ちょうちんを指で突き割る。そうして目覚めた憲法ちゃんが寝声で喋り始めた。
「恋はとりあえずアタックすればいいんだよ。食パン咥えながら道角でかずきくんにぶつかっちゃえ」
「それほんとに大丈夫かよ」
「絶対大丈夫じゃないわ」
一人で納得する憲法ちゃんに冷たい視線が注がれる。しかし彼女はそれを気にすることもなく再度眠りにつき始めた。
「なにそれ!いいかも!」
「み、みらいちゃん!?たぶんやめといた方がいいよ!」
「そうよ!あんなのただの寝言みたいなもんだわ」
意外にも食いついてしまったみらいちゃんを必死に二人が引き止める。
何となく計画の方向が決まったことで、その後はしばらくその場でたわいもない会話を続けていた。
「てことで、俺が聞いた感じ、かずきには好きな人がいそうだ」
翌日の休み時間にみんなで民法くんの机の周りに集まっていた。
「ほんとに!?民法くんありがとう」
その報告を聞いたみらいちゃんが嬉しそうに民法くんにお礼を述べた。
「これでほぼ確定だね!結婚の約束までしたなら好きな人はみらいに決まってるし。良かったねみらいちゃん」
みらいちゃんと同じように喜びながら民訴ちゃんが彼女と顔を見合せた。
「私、明日告白することにする」
「え!?」
「みんながこんな風に応援してくれたんだもん。ずっと怖気付いてちゃだめだって思って」
「じゃあ告白する場所とか時間もしっかり決めないとだ」
「んー、どうするのがいいかな」
みんなで考えていると、各々が順番に意見を言い始めた。
「ラブレター送る?とか」
「ちょっとロマンチックでいいかも!」
「ダンゴムシプレゼントする」
「却下」
「俳句作って告白するのでどうだ」
「棄却」
「んー、じゃあ放課後二人で遊んで、その帰り道で告白する!日が落ちるときにまじっくあわー?っていうマジックがかかるらしい」
「憲法ちゃんにしては珍しくいいこと言うじゃない」
「なんかすごいオシャレ!そうしようかな」
憲法ちゃんの意見にみらいちゃんが好感を示した。結果、明日の放課後、かずきくんを遊びに誘い、その帰り道で告白をする計画になった。
その後予鈴が鳴って、それぞれが自分の席に戻る。途中、憲法ちゃんが、みらいちゃんの手を握って、かずきくんの席へと向かった。
「みらいちゃんが鉛筆忘れたからかずきくんに貸して欲しいって」
「憲法ちゃん何言ってるの!?」
驚くみらいちゃんとは裏腹に、かずきくんは特に疑問を抱くこともなく、鉛筆を差し出した。
「みらいは忘れ物多いなー。はい、これ」
「あ、ありがとう」
【民法593条 物の貸し借りについては民法に規定がある。物の貸し借りは、使用貸借という契約の一種として扱われ、物を借りた人はそれを返す義務が発生する】
お節介を焼いた憲法ちゃんは、グッと親指を立てて、かっこつけながら自分の席に戻る。そして、授業が始まると同時に、いつも通り居眠りを始めた。
「なんか、尾行なんてちょっとわくわくするね」
刑訴くんがいつになく楽しそうに生垣に隠れている。こっそりみらいちゃんの告白を見守るために全員で尾行することになったのだ。
「それなー。私たちちゃんと探偵してる」
賛同の言葉を述べながら、憲法ちゃんが双眼鏡を覗いている。
「その双眼鏡どこで買ってきたのよ」
「よくわかんない通販。五千円くらいしたけど、ホームページに世界一の高級品!嘘じゃないよって書いてあったから安心安全の高級品」
「ほんとにあんたは……」
「まあそん時は詐欺で取り消しだな」
呆れた声を出す刑法ちゃんに、民法くんが苦笑しながらフォローを入れた。
【民法 96条1項 詐欺によってした意思表示は取り消すことが可能。ただし、詐欺が成立するには、
①相手を勘違い(錯誤)させようとする意思
②相手を勘違いさせた上で、意思表示させようとする意思
③実際に嘘をつくなどして、相手を騙す行為を行ったこと(違法な欺罔行為)
④これによって引き起こされた勘違いがなかったならば、当該意思表示はしなかったと言えること(因果関係)の四つの要件が揃うことが必要。
刑法246条1項 詐欺行為をすると、詐欺罪になる】
【民法549条 何か物をあげた後に、やっぱり返してと言って喧嘩になるパターンがあるが、これは民法に則って解決できる可能性がある。贈与契約は、口約束のみで行われ、かつ物を相手に渡してない場合であれば当事者双方から解除することができるため、"やっぱりあげたくない"という言い分が通る。逆に、書面でしていた場合や、書面でなくとも、物を相手に渡してしまった場合(履行の完了部分)については、一部例外を除き解除ができないため、"返して"と言うことが出来ない(同法550条)】
「そう、それで手伝って欲しいの」
「いいよ任せて!」
二人は話し終えると、探偵団の他メンバーがいるところに近寄って来た。それに気がついた四人は顔を上げて民訴ちゃんの顔を見る。それに対して、みらいちゃんが事情を話し始めた。
「民訴ちゃんたちが法律探偵団やってるって聞いて、解決して欲しい悩みがあって、」
みらいちゃんがどこか恥ずかしそうにもじもじしながら、言葉を継いだ。
「私、かずきくんのことが好きで、どうしたらいいかなって」
「ていうことなんだけどみんないいかな?」
「え、それは全然事件じゃないし探偵団では……」
民法くんが断ろうとしたところで、後ろから刑法ちゃんが軽く彼の頭を叩き、身を乗り出した。
【刑法208条 暴行=不法な有形力の行使と定義され、実際に人を殴ったら暴行罪になることはほとんどの人が理解していると思う。しかしそれだけではなく、判例は①人に塩をまいた行為や、②車の幅寄せ行為等にも暴行罪を認定している。これに鑑みると、今回だけでなく今までのお話の中でも、刑法ちゃんや民法くんは既に暴行を犯していそう……
参考判例:①福岡高判昭和46年10月21日刑裁月報
3巻10号1311頁
②東京高判昭和50年4月15日刑裁月報7巻4号480頁】
「もちろん!!みらいちゃんの恋がどうやったら叶うか私達も一緒に考えるよ!」
「いいのかよ……」
「何でも解決でしょ!」
斯くして、法律探偵団一同によるみらいちゃんの恋愛解決プロジェクトが始まった。
放課後、みらいちゃんを公園のベンチに呼び、これまでの経緯を聞いていた。
「かずきくんは幼稚園の頃から一緒で、みんなに優しいの。かっこよくて、運動もできて。それにね、昔大人になったら私と結婚してずっと一緒に居てくれるって言ってくれたんだ。でも、かずきくんは人気者だから、最近他の子とも仲良くしてて、なんかもやもやする」
民訴ちゃんと刑法ちゃんが目を輝かせながら頷く。憲法ちゃんは鼻ちょうちんを作りながら下を向き、刑訴くんは地面のダンゴムシを眺めている。
「きゃー!ちっちゃい頃から結婚の約束なんて超ロマンチックじゃん」
「そんなのはやく告白して彼氏にしちゃいなよ!」
民訴ちゃんと刑法ちゃんが次々に思いを口にすると、みらいちゃんが少し眉を下げて困った顔をした。
「でも……もし告白してふられちゃったら。もうかずきと今までの関係で居られないかもしれない。そうなったら私、これからどうやって生きていけばいいかって考えると怖くて」
みらいちゃんが話し終えると、今まで難しい顔をしながら腕組をしていた民法くんが口を開いた。
「俺がちょっとかずきに聞いてみようか?時々話すし、好きな人いそうかどうかとかだけでも」
「それいいかも!」
刑法ちゃんが賛同し、それにみらいちゃんも納得した。
「じゃあ一旦明日それでやってみて、また報告ってことで」
言いながら、隣で寝ている憲法ちゃんの鼻ちょうちんを指で突き割る。そうして目覚めた憲法ちゃんが寝声で喋り始めた。
「恋はとりあえずアタックすればいいんだよ。食パン咥えながら道角でかずきくんにぶつかっちゃえ」
「それほんとに大丈夫かよ」
「絶対大丈夫じゃないわ」
一人で納得する憲法ちゃんに冷たい視線が注がれる。しかし彼女はそれを気にすることもなく再度眠りにつき始めた。
「なにそれ!いいかも!」
「み、みらいちゃん!?たぶんやめといた方がいいよ!」
「そうよ!あんなのただの寝言みたいなもんだわ」
意外にも食いついてしまったみらいちゃんを必死に二人が引き止める。
何となく計画の方向が決まったことで、その後はしばらくその場でたわいもない会話を続けていた。
「てことで、俺が聞いた感じ、かずきには好きな人がいそうだ」
翌日の休み時間にみんなで民法くんの机の周りに集まっていた。
「ほんとに!?民法くんありがとう」
その報告を聞いたみらいちゃんが嬉しそうに民法くんにお礼を述べた。
「これでほぼ確定だね!結婚の約束までしたなら好きな人はみらいに決まってるし。良かったねみらいちゃん」
みらいちゃんと同じように喜びながら民訴ちゃんが彼女と顔を見合せた。
「私、明日告白することにする」
「え!?」
「みんながこんな風に応援してくれたんだもん。ずっと怖気付いてちゃだめだって思って」
「じゃあ告白する場所とか時間もしっかり決めないとだ」
「んー、どうするのがいいかな」
みんなで考えていると、各々が順番に意見を言い始めた。
「ラブレター送る?とか」
「ちょっとロマンチックでいいかも!」
「ダンゴムシプレゼントする」
「却下」
「俳句作って告白するのでどうだ」
「棄却」
「んー、じゃあ放課後二人で遊んで、その帰り道で告白する!日が落ちるときにまじっくあわー?っていうマジックがかかるらしい」
「憲法ちゃんにしては珍しくいいこと言うじゃない」
「なんかすごいオシャレ!そうしようかな」
憲法ちゃんの意見にみらいちゃんが好感を示した。結果、明日の放課後、かずきくんを遊びに誘い、その帰り道で告白をする計画になった。
その後予鈴が鳴って、それぞれが自分の席に戻る。途中、憲法ちゃんが、みらいちゃんの手を握って、かずきくんの席へと向かった。
「みらいちゃんが鉛筆忘れたからかずきくんに貸して欲しいって」
「憲法ちゃん何言ってるの!?」
驚くみらいちゃんとは裏腹に、かずきくんは特に疑問を抱くこともなく、鉛筆を差し出した。
「みらいは忘れ物多いなー。はい、これ」
「あ、ありがとう」
【民法593条 物の貸し借りについては民法に規定がある。物の貸し借りは、使用貸借という契約の一種として扱われ、物を借りた人はそれを返す義務が発生する】
お節介を焼いた憲法ちゃんは、グッと親指を立てて、かっこつけながら自分の席に戻る。そして、授業が始まると同時に、いつも通り居眠りを始めた。
「なんか、尾行なんてちょっとわくわくするね」
刑訴くんがいつになく楽しそうに生垣に隠れている。こっそりみらいちゃんの告白を見守るために全員で尾行することになったのだ。
「それなー。私たちちゃんと探偵してる」
賛同の言葉を述べながら、憲法ちゃんが双眼鏡を覗いている。
「その双眼鏡どこで買ってきたのよ」
「よくわかんない通販。五千円くらいしたけど、ホームページに世界一の高級品!嘘じゃないよって書いてあったから安心安全の高級品」
「ほんとにあんたは……」
「まあそん時は詐欺で取り消しだな」
呆れた声を出す刑法ちゃんに、民法くんが苦笑しながらフォローを入れた。
【民法 96条1項 詐欺によってした意思表示は取り消すことが可能。ただし、詐欺が成立するには、
①相手を勘違い(錯誤)させようとする意思
②相手を勘違いさせた上で、意思表示させようとする意思
③実際に嘘をつくなどして、相手を騙す行為を行ったこと(違法な欺罔行為)
④これによって引き起こされた勘違いがなかったならば、当該意思表示はしなかったと言えること(因果関係)の四つの要件が揃うことが必要。
刑法246条1項 詐欺行為をすると、詐欺罪になる】
【民法549条 何か物をあげた後に、やっぱり返してと言って喧嘩になるパターンがあるが、これは民法に則って解決できる可能性がある。贈与契約は、口約束のみで行われ、かつ物を相手に渡してない場合であれば当事者双方から解除することができるため、"やっぱりあげたくない"という言い分が通る。逆に、書面でしていた場合や、書面でなくとも、物を相手に渡してしまった場合(履行の完了部分)については、一部例外を除き解除ができないため、"返して"と言うことが出来ない(同法550条)】



