来年も、君と桜を。

春の風が、少しだけ冷たかった。


新しいクラス、新しい席。

全部が変わるこの季節が、私はあまり好きじゃない。


「……はぁ」


小さくため息をつく。

胸の奥が、いつもより少しだけ苦しい。


ーーでも、大丈夫。


私は何事もないみたいに顔を上げた。




「今日からこのクラスの担任になる、小野だ。席はもう決まってるからなー」


周りがざわざわと動き出す。

私も自分の席に向かおうとしたらーー


ドンッ

「……っ」


誰かにぶつかった。

思ったよりも強い衝撃に、体がぐらつく。

咄嗟に近くにあった机に手をついて、なんとか倒れるのを防いだ。


「す、すみません……」


顔を上げると、そこにいたのは、


「……は?」


低くて、不機嫌そうな声。

黒い髪に、鋭い目。

誰が見ても「関わっちゃいけない」って思うタイプの男子。


「前見て歩けよ」


苛立ちがこもった声でそれだけ言って、彼は私も一瞥もせず通り過ぎた。


「……なにあれ」


思わず小さく呟く。

感じ悪い。

最悪。


ーーなのに。

どうしてか、その背中が少しだけ気になった。