ツンデレ男児 ― 本音を出したら、ちゃんと届いた ―

外遊びの時間

笑い声が、園庭に広がっていた。
ぼくもその中にいた。

そのときだった。

「うわっ」

足を滑らせて、転んだ。手のひらを強く打った。 一瞬、動きが止まる。 砂がついたまま、じっと手を見る。
かなり、ひりひりする。

「トワくん、大丈夫!?」

近くにいた別の先生が駆け寄ってくれる。

「見せて、洗おうか」

優しい声。
いつもなら、

「大丈夫」

そう言って立ち上がる。 でも今日は、

「……」

何も言わない。 手を引かれそうになって、少しだけ、引く。

「……いちか先生」

小さな声
先生は、少し驚いたように見えた

「え?」

「……いちか先生がいい」

その言葉は、とても静かに、でもはっきりと言った。
ぼくは、そのまま動かなかった。

「トワくん!」

呼ばれて振り向くと、いちか先生が少し 慌てて駆けてきた。

「どうしたの?」

「……これ」

血が出てるところを指差す。
砂だらけで、少し赤くなっている。

「そっか、びっくりしたね」

やさしい声だった。
ぼくは黙ったまま。
でも、手は引っ込めなかった。
水でゆっくり洗う。

「痛い?」

それ以上は聞かれなかった。
ただ、となりにいた。
それだけで、少しだけ、ほっとした。
ばんそうこうを貼ってもらう。

「はい、おしまい」

「……ありがとう」

小さな声。
いちか先生は、少しだけ笑った。

「どういたしまして」

そのあと、少しだけそのままいた。

「どうしたの?」

「……べつに」

「……」

ぼくは、ちょっとだけ下を見た。

「……ここに、いてもいい?」

小さな声で言った。
それは、ぼくの精一杯のわがままだった。
遠くで、みんなの声がする。
でも、ここはちょっとだけ静かだった。
ぼくは、ばんそうこうを見つめながら、
小さくつぶやいた。

「……いちか先生」

「ん?」

「……なんか、だいじょうぶ」

その言葉は、とても小さかった。
でも、ちゃんとほんとうだった。