ツンデレ男児 ― 本音を出したら、ちゃんと届いた ―

送迎を待っている、トワくん。 担任では無い先生が教室に顔を出す。

「いちか先生、これ後でお願いしてもいいですか?」

「はい」

そう返事をしたとき、

「せんせい」

横から、小さな声。トワくんだった。

「ん?」

「それ、ぼくも手伝うよ」

一瞬、言葉に詰まる。

「え?」

少しだけ間があって、
「前も手伝いたかったけど、先生のお仕事って言ってたでしょ?
今日もそうだけど……手伝っていい?」

その言葉に、思わず笑いそうになる。

——ちゃんと覚えてるんだ。

「ありがとう。これは明日みんなでやるやつだから、楽しみにしててね」

「うん」

トワくんは少しだけ笑った。 ほんの一瞬だけど、ちゃんと、子どもの顔で。 アイカ先生がちらっとこっちを見て、小さく口角を上げた。

トワくんの母親が迎えにきた。 トワくんは、少しだけ手を止めていた。

「どうしたの?」

声をかける。

「……これ、どうやるの?」

手元の準備を見ながら、そう聞いてきた。珍しい言葉だった。 今までなら何も言わずに頑張っていたはず。

「手伝うね」

「うん」

隣に座る。少しだけ距離が近い。 トワくんは、ちらっとこちらを見てから、また手元に目を戻した。 ゆっくり、ゆっくり進める。

「できた」

「ほんとだ、できたね」

その日の帰り道 トワくんは、こちらを振り返った。

「せんせい」

「ん?」

「ありがとう」

その言い方は、まだ少しぎこちなくて、でも確かに、“頼る”という形をしていた。 私は小さく頷くと、再び前を向いた。