交わらない2人は、恋をしている

 その会話を思い出すと少し胸が痛くなった。
 唯奈は優しくて人の気持ちを一番に考えてる人のはずと思っていたのに。
 月曜日の放課後、いつもの図書館に行くと珍しく唯奈は1人だった。
「あ、碧君。どうしたの元気なさそうだけどさ。」
 この気持ちは顔にも現れてたみたいだ。
「いや、なんでもないよ。」
 さすがに正直には言えなかった。
「なんとなくだけどさ、誰かが私の悪口言ってたとかじゃないの?」
 まるで心を読めれた気分だった。
「いや、別にそんなことはないよ。」
「絶対そうじゃん。今も声震えてたでしょ?正直に言ってくれないかな。私も誰かに何も言われたか分からないまま過ごすのは嫌だし。」
 そうだよね、そう言い僕は昨日のことを話した。
 僕の話を聞き終えた後、納得したような顔でこう言った。
「向こうがそう思ってるなんて知らなかった。これからどうするか少し考えるね。教えてくれてありがとう。」
 そう言った後、唯奈は勉強を始めた。僕はどうしたら良いか分からず家に帰ることにした。

 木曜日の夜、僕はいつも通り、家族でバラエティ番組を見ていた。するとスマホに通知が鳴った。
 見ると陽毬からのLINEだった。3件きていた。嫌な予感がした。
(ねえ、唯奈から私が唯奈のこと嫌いって碧から聞いたって言われたんだけど。)
(間違えたって本人に伝えて。)
(そんなことするとは思ってなかった。もう碧とは話したくない。)
 たった3件。でも胸に重く響いた。
 確かにそのことを唯奈に伝えたのは悪かった。でもどうしてそれを本人に言ったのか。何がどうなっているのか分からなかった。その時、自分が悪いと思えなかった。
 そこから陽毬、唯奈、そして仁美と距離が遠くなってしまった。
 すれ違っても知らないふり。
 
 君と僕は交わることのない。それでも今でもなぜか、僕は君が、いや仁美が好きだ。