桜はすっかり緑の葉で生い茂り、それなりに友達もできて、なんとか高校生活にも慣れてきた。
「奈桜は彼氏居ないの?」
「え?!居ない居ない!」
窓際の席で良かったと思った。
校庭で次の体育の授業の準備をする先生を目で追っていた私は、慌てて友達のカオリに視線を戻した。
小幡 想(おばた そう)先生。2年3組の副担任。一際目を引くカッコ良さは、学校中の女子達からも憧れの的だった。
「小幡カッコイイのに、既婚者だってーナシナシ」
入学早々、すぐに耳に入ってきた。
結婚、してるんだ。
見えてる景色が一気にモノクロに染まっていく気がした。
今でも覚えてる。
腕を掴まれた時の、温かさ。
あの後、先生もハッとして「ごめん!!」って慌てて手を離してたっけ。
思い出すだけで、心臓が速くなる。
バカみたい。
そんな人、好きになんてなるもんか。
奥さんがいる、ましてや先生なんて…━━
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