家の中に入ると、珍しくパパも帰宅していた。
いつもは日付変わっても帰ってこないくせに。
リビングの電気がやけに眩しく感じた。
「おかえり」
ソファに座っていたパパはノートパソコンを閉じて私を見る。
「ただいま」
それだけ返すのがやっとで。
ママは何も言わずにキッチンの方へと行って、コップに水を注ぐ音だけが、静かに響いた。
逃げたい。
でも、足が動かない。
「遅かったな、奈桜」
パパはいつもの笑顔だけれど、目は笑っていない。パパの視線は私とママを行き来していて、ママの雰囲気で何かを感じ取ったようだ。
「…座りなさい」
ママが荒々しく水の入ったコップをテーブルへ置いて、パパの隣に腰を下ろした。
「どうした?」
パパがママの背中を摩る。
ママは頭を抱えたまま、深くため息を吐いた。
「奈桜が教師の車で帰ってきたの」
「教師?どういう事だ、奈桜」
いつも以上に低い声。一気に空気が変わるのを肌で感じた。
「文化祭実行委員で、後片付けが長引いちゃって…その、先生が送ってくれるって…」
「大人には分かるのよ。2人の雰囲気は教師と生徒じゃなかったわ」
心臓が、ドクンと大きく跳ねる。
沈黙。
時計の音だけが、リビングに響く。
カチ、カチ、と。
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