「……奈桜?!」
背後から、低い声。
「ママ?!」
振り返った瞬間、一気に心臓が跳ね上がる。
街灯に照らされたママの顔は、思っていたよりも落ち着いていた。
「今の車、誰?」
さっきまでの余韻に浸ることさえ、許されない。
「…えっと、…学校の、先生」
ドクドクと脈打つ心臓が、喉の奥まで響いて、言葉がうまく出てこない。
ママの視線がじっと私を見つめたまま動かない。
「随分遅い帰りね…」
「文化祭実行委員だったから、その、遅くなったから送るって…」
「…中に入って、ちゃんと話しなさい」
全部、見透かされた気がした。
━━終わった。
頭の中で最悪の未来が一瞬で広がる。
さっきまで胸の奥に残っていた温かさが、じわじわと不安に変わっていく。
それでも。
車の中でのあの一瞬。
目が合った時の、優しい笑顔が頭から離れない。
どうしよう、先生。
やっぱりあのまま帰らなきゃ良かった…
鼻の奥がツンと痛くなる。
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