「……行くぞ」
先生の背中を追いかける。
さっきまでよりも、少しだけ距離が近いまま。
——このあと、2人きりの車内。
そう思っただけで、
心臓の音が止まらなかった。
静かな校舎を出て、先生の車に乗り込む。
ドアが閉まる音が、やけに大きく響いた。
——2人きり。
逃げ場のない距離。
エンジンがかかる。
低い振動が、身体に伝わる。
「……シートベルト」
「……あ、はい」
慌てて手を伸ばすと、
「ほら」
カチッ
先生が先に留めた。
「……え」
すぐ近くにある顔。
距離が、近すぎる。
先生の柔軟剤の匂いが、ふわっと広がる。
「……顔、真っ赤」
くすっと笑う声。
「……先生のせいです」
小さく言い返すと、
「可愛いな」
って、少しだけ低く笑った。
そのまま車は、ゆっくりと走り出す。
窓の外に流れる夜の景色。
なのに——
意識は全部、隣に持っていかれてる。
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