花火が終わって、
しばらく2人でその余韻に浸っていた。
もう校内にはほとんど誰もいなくなっていて。

夜風が少しだけ涼しくて、
さっきまでの熱が、ゆっくり引いていく。


「……そろそろ帰るか」


先生がぽつりと呟く。

「……はい」


名残惜しいけど、頷くしかない。


屋上の扉を閉めて、
2人で階段を降りる。

さっきまでの距離感のまま、
何も言えない時間が続く。


ゴミ捨ても終わって一息ついた時、

「……もうこんな時間か」

先生が腕時計を見る。

つられてスマホを確認する。


「……あ」

思わず声が漏れる。

思ってたより、遅い。
もう21時を過ぎていた。

ママから何件も不在着信が残っていた。
実行委員だから終わるの遅くなるかも、とは言っておいたけれど。


「どうした」

「……うち門限、17時で…。まぁ今日は…さすがに大丈夫だとは思うけど」

自分で言ってて情けなくなる。


「……は?」


先生が一瞬固まる。


「いや、今何時だと思ってんだよ」


少し呆れたように笑う。



「……こんな遅くに帰るの、初めてかも」


小さく呟くと、

先生は少しだけ考えて——



「……電車で帰るのか?」

「……はい」


頷く。

でも、この時間だと乗り換えもあるし、
確実に遅くなる。


少しの沈黙。

そのあと——



「……送る」



さらっと言われる。



「えっ」

思わず顔を上げる。


「いや、でも——」


「心配だから」

当たり前みたいに言う。



「……でも」


先生と2人で車なんて。

そんなの——

意識しないわけない。


「……嫌か?」



少しだけ低い声。

試すみたいな響き。


「……っ、嫌じゃないです」

即答してしまって、
余計に恥ずかしくなる。

先生は一瞬だけ目を細めて、

「じゃあ決まり」

って、軽く言った。

それだけで——

胸が、うるさくなる。


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