「綾瀬」


名前を呼ばれる。

振り向くと、先生がすぐ近くにいた。

さっきより、距離が近い。

逃げられないくらい。


「今日、よくやったな」


低くて、優しい声。

その一言で——

一気に、全部込み上げてくる。



「……っ」


涙が出そうになるのを、必死で堪える。


「……頑張りました」


やっと、それだけ言うと、

先生は少しだけ笑って、


「知ってる」

って、静かに返した。

その目が、優しすぎて。

もう、ダメだと思った。




「……先生」


気づけば、名前を呼んでいた。

言いたいことがあるわけじゃない。

でも、呼びたくて。

先生は何も言わずに、こっちを見る。

静かな教室。

誰もいない空間。



「……なんでもないです」


結局、言えなくて目を逸らす。

その瞬間——

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