周りに誰もいないことに、気づく。

静か。

さっきまでの喧騒が嘘みたいに。


「……綾瀬」

名前を呼ばれる。

距離が、少しだけ近い。

「今日、頑張ってるな」

優しい声。

その一言で——

一気に、力が抜ける。

「……先生がいるからです」

また、思ったまま口にしてしまう。

一瞬の沈黙。

言いすぎたかも、って思った時。




「……それ、反則」




小さく呟く声。


「え?」

聞き返すと、先生は少しだけ視線を逸らした。



「なんでもない」



でも、その横顔が少しだけ崩れていて。

——余裕、なくなってる?

ドクン、と心臓が鳴る。



「……よし、戻るぞ」



先生が先に歩き出す。


「はい」

その背中を追いかける。

さっきよりも、少しだけ距離が近くなった気がして、胸の奥がポカポカと温かい。


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