すると、先生がすっと私の後ろに回り込み、腕をそっとまわして抱きしめた。



「…大丈夫。俺がここにいるから、怖くない。ゆっくり、ゆっくり呼吸して」


胸に顔を埋めて、先生の体温と低く落ち着いた声がダイレクトに届いて、心臓のドキドキは収まらないけれど、少しずつ呼吸が整っていくのを感じた。



「大丈夫、大丈夫…」


先生、無理です。

好きにならないなんて、無理。


どうしてくれるの、本当に。



「先生…名前、呼んで?」


震えのせいで喉の奥から絞り出しても、掠れた声。消えてしまいそうな、弱い声だった。
先生のワイシャツをキュッと握る手は言うことを聞かずにガクガクと震えていた。


「な、お…奈桜、大丈夫。奈桜」


先生も、鼓動がドドドドって速い事に気付いた。


焦ってるかな。私が暗所恐怖症でパニックになって、先生も不安だよね…



「絶対、大丈夫だから…な?」

「ん…」


涙が溢れて頬を滑り落ちた。
諦めなきゃ、この気持ちは、諦めなきゃいけないの。


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