静まり返った戦場に、一人の兵士の掠れた歌声が漏れ出しました。
周囲が驚いて視線を向けると、彼はきまり悪そうに頬を掻き、消え入りそうな声で答えました。
「……す、すまん。なんだか急に、子供の頃の、夕暮れの帰り道を歩きながら歌った歌を思い出しちまってな」
すると、隣にいた別の兵士も、弾かれたように顔を上げました。
「その歌……俺も知ってる。母さんがよく口ずさんでいた」
旋律はさざ波のように広がり、一人、また一人と声を重ねていきます。
やがてそれは西の国の全軍へと伝播し、さらには東の国の子供も口ずさみました。
迎え撃つはずだった東の国の兵士たちや、街の民までもが同じ歌を口ずさみ始めました。
国境を越え、敵味方の壁を溶かす、空を揺らすほどの大合唱。
その温かな響きは、操り人形となっていた西の国の王の耳にも届きました。
虚ろだった彼の瞳に微かな光が戻り、脳裏の奥深くにこびりついていた幼き日の記憶をなぞるように、その唇が震え始めます。
「……この、歌は……」
計画を台無しにされたジルバは、狂ったように髪を振り乱して叫びました。
「ええい、黙れ! 歌うのをやめるのだ。憎しみを思い出しなさい、この愚か者どもめ!」
しかし、人々の心に灯った「幸せな記憶」の炎は、彼女の罵声をかき消して燃え上がります。
周囲が驚いて視線を向けると、彼はきまり悪そうに頬を掻き、消え入りそうな声で答えました。
「……す、すまん。なんだか急に、子供の頃の、夕暮れの帰り道を歩きながら歌った歌を思い出しちまってな」
すると、隣にいた別の兵士も、弾かれたように顔を上げました。
「その歌……俺も知ってる。母さんがよく口ずさんでいた」
旋律はさざ波のように広がり、一人、また一人と声を重ねていきます。
やがてそれは西の国の全軍へと伝播し、さらには東の国の子供も口ずさみました。
迎え撃つはずだった東の国の兵士たちや、街の民までもが同じ歌を口ずさみ始めました。
国境を越え、敵味方の壁を溶かす、空を揺らすほどの大合唱。
その温かな響きは、操り人形となっていた西の国の王の耳にも届きました。
虚ろだった彼の瞳に微かな光が戻り、脳裏の奥深くにこびりついていた幼き日の記憶をなぞるように、その唇が震え始めます。
「……この、歌は……」
計画を台無しにされたジルバは、狂ったように髪を振り乱して叫びました。
「ええい、黙れ! 歌うのをやめるのだ。憎しみを思い出しなさい、この愚か者どもめ!」
しかし、人々の心に灯った「幸せな記憶」の炎は、彼女の罵声をかき消して燃え上がります。



