パフェの魔法:それは、あなたが望んだ物語

「……本当だわ。でも、あんた、今はそれどころじゃないだろう!」

 婦人は驚きつつも、目前に迫る危機を思い出して吐き捨てました。

「やっぱり魔女なんて碌なもんじゃないね。こんな時に男を骨抜きにしちまうんだから!」

 婦人は毒づきますが、彼女もまた、その一輪の花から目が離せなくなっていました。
 パフェの背中越しに吹く風が、昨日までの埃っぽさを消し、どこか甘い香りを運んできたからです。

「……来たぞ!」

 見張りの兵士の鋭い声が響き、広場にいた誰もが身をこわばらせました。
 地響きと共に現れたのは、銀色に輝く鎧に身を包んだ西の国の精鋭たち。

 その中央には沈痛な面持ちの王とシエン王子が、そして後方には、勝ち誇った笑みを浮かべる負の魔法使いジルバが、どろりとした闇を背負って付き添っています。

 東の国の街の人々の手に力が入り、武器を構えようとしたその時でした。
 最前線に立つパフェが、そっと彼らを制するように柔らかな手を差し伸べたのです。

「……皆さん。あなたたちの本当の願いは、何ですか?」

 迫りくる大軍勢の威圧感に、一人の男が震える声で叫びました。

「な、何を今さらそんなことを! 殺されるのを待てと言うのか!」

「いいえ。……どうか、あなたたちの心の奥底にある本当の想いを、今ここで願ってください。ただ、それだけで良いのです」