ひらけ、ムコウ側の世界!



夏那恵と真白と別れて、樹と2人きりで誰もいない夜道を歩く。どうやらこっち方向に『花火観戦の穴場スポット』があるらしい。

というか、全員すげーな…って思う。
正直、能力が使える不思議な世界〜って感じはしない。

だって能力がバンバン飛び交ってるわけじゃないし。

いつの日か、夏那恵と服を買いに行った日に…騒動で能力使ってるヤツは居たけど。


「みんな、凄いよね〜」


しんとした空気を打ち破るかのように、樹がそう言った。

感心したような声色だったけど、樹の方を見たら、どこか読み取れない表情をしていた。


「ほら〜、僕の能力って役に立たないでしょ?」

「…え?」


ふわふわとした口調で、自傷な言葉を言う樹に驚く。
だって、そんなことを言うなんて微塵も思ってなかった。


「雷…しかも雷雨の時だけ使えるって。陽くんは『火って怖がられる〜』とか言ってるけど、さっきみたく役に立ってるじゃん」


いつもより低いトーンだった。

たしかに…雷、って言ったら怖いイメージが最初に思い浮かぶかもしれない。
かっこいいとか思うけれど、それは雷を間近で見たら言えなくなること。


「…あはは、ごめんね!変なこと言って!」


樹はそう言って笑ったけれど、かなり無理していた。

俺はとっさに慰める言葉を探した。


「なら…樹が『能力のトップ』になれたのは、なんでだよ?それは樹の能力が優れてたからで…」

「僕が校内で1度、能力を派手に使っただけだよ。
大きな雷を打っただけで、おおげさに『すごいね〜』って言われただけ」


でも俺が慰めようと言った言葉は、樹の心をさらにえぐった。そんな気がした。


「…慰めようとか、思わなくていいよ〜!」


結局、俺のそんな軽々しい発想は…軽々しく樹に見破られ、逆に気を使われてしまった。

…とんだ馬鹿者だな、俺。