ひらけ、ムコウ側の世界!



そんなとき、真白が視界に映った。

俺の目の前の席で、ボーッとしながら座ってる真白。
さっきから一言も発さねぇし、なんかあったか…?と思い声をかけた。


「真白?」

「…ん?あ、ごめん!なんでもないよ。行こ!」


悟られたくない、とでも言うかのように真白は勢いよく立ち上がった。


「あ」


だけどそのせいで、水が注がれていた紙コップは…簡単に倒れてしまった。

そして水は、小さな滝を作る。


「あぁ!?ごめんっ…!!」


驚いたように大きな声で言った真白は、とっさに机に置いてあった赤色のハンカチを浮かせて……


「って、真白!?それあたしのハンカチ!!」

「え、嘘っ!ごめん、かなえちゃん……!」


夏那恵が、すぐさまそう言ってハンカチをキャッチしたことで、ハンカチは犠牲にならなかった。


「ちょ、一旦落ち着けって真白!」


陽介が真白の肩をポンっと叩くと、真白は気まずそうに目を逸らして「ごめん…」と小さく呟いた。


「…乙女しかいないのな」

「アンタは言葉選びを学びなさいよ!!」


静の声は夏那恵によって遮られて、よく分からなかった。

ってそれより!水をどうにかしねーと……!!


「龍我。それ、触らないで」

「はぁ?なんで……」


バキバキっ


俺が聞く前に、水はあっという間に氷になってしまった。


「…しろ。そこの紙コップじゃなくて、氷を浮かせて」


静が指さすところには、紙コップ第2号が…浮いてる!?
これも真白の能力かよ!!


「あ、う、うん…ごめん」


紙コップを浮かしてることに気がついたかのように、ゆっくりと机に下ろし…静が凍らせた水を次は浮かせる。


「…俺は、加工できるから」


そう言うと、静はその氷に手をかざす。
すると…あっという間に、丸いボールのようになってしまった。

もう水の跡形もない。ボールは机に堂々と置かれてるけど。


「お!これでサッカーできんじゃん!」

「絶対痛いでしょ!陽くんはスポーツ大好きだね〜!」


「さ、行こ〜!」と樹は売店へと歩いていく。
他のヤツらも、何も気にしていないかのように歩いていった。


「真白。なんも気にしないでいいからな」


立ち尽くしてる真白にそう声をかけて、俺もアイツらの背中を追いかけた。


「…好き、なのかなぁ」


小さな呟きは、俺に届かなかった。