ひらけ、ムコウ側の世界!



「…この世界のこと、意味不明で信じきれてねーけどさ。悪くねぇかも」


これは…きっと、本音。
自分のことなのに、本音がよくわからないけど。


「…は」


ふと、樹のことを見てみる。
樹はこぶしをピクピクさせて、下を向いてる。

え、なんか不快にさせたか?

と思ったが、急に顔をあげて……


「りゅ、龍くーんっ!!」

「っちょ、なにしてんの!?」


樹は俺に飛びついてきた。

なので慌てて避け、樹に叫ぶ。
いやいや、勝手に飛びついてくるとかどーいうことだよ!?


「えーっ。なんで避けるの……!」

「避けるに決まってんだろ!!」


避けない方がおかしいだろ!
てか、まだ会って1日も経ってないからな!?


「でも、さすがにムコウ側の世界に戻りたいよね。頑張って帰る方法を探そう!」


笑顔でそう言ってくれるけど…俺は素直に頷けなかった。

だって、あっちの世界にいたって意味が__________


「あ、そうだ!」


樹が思い出したかのようにポンっと手を打ったので、俺は慌てて彼に視線を戻す。


「龍くんはお腹空いた?」

「え?いや…まぁ、ちょっと」

「じゃあ、あとで食堂行こう!寮に住んでる子はみんな食堂で……」


バキバキッ


樹が言い終わる前に、嫌な音が聞こえた。
びっくりして振り向くと…


「っ……」


鋭くとがった氷が、引き締まった顔をした陽介に向けられている。

そして…


「…陽介。おれのこと分かったように言わないでって、いつも言ってるじゃん」


冷酷な顔をしている静の手には、大きな水筒が握られていた。