「んー、龍くん専用の物を用意するには時間かかるし…今日は僕らの物使って!」
「…どーも」
潔癖ってわけでもねーし、それは別に大丈夫。
「じゃあ、くしは俺の使って!1番いいヤツだから!」
「あ、クッションは僕の貸すね!触り心地すーっごくいいから!」
ただ2人からあれもこれもと差し出されすぎて、全部受け取ってたら、俺の腕の中はあっという間に埋まってしまった。
ただ1人、静は知らん顔して本読んでるけど。
「あ、静くん!手鏡貸してあげてー!」
「…そこの戸棚に入ってるやつ、適当に使って」
「りょーかい!」
ただ物は貸してくれるらしい。
意外と優しい…と思ったが、俺は鬼ごっこで静の氷に滑って転んだことを思い出した。
あの時の静、笑ってたんだぜ?怖い怖い。
「…あ!やばい!!」
1時間前くらいのことを思い出してたら、樹が突然声をあげた。しかも焦ってる。
何があったのかと思って聞けば……
「…なに?」
「あいや、龍くんに貸す服がない!って思って…」
…服?
あ、そーいや今の俺…制服だった。制服のままこっちの世界に来たのか。
「えー?1番大切じゃん!!」
「そうだよね!!んーどうしよ。僕と陽くんの服だと…さ、サイズが合わないし!」
樹はそう言って、うーんと考え込んだ。
…絶対『自分が小さい』ってこと認めたくなかったんだろ、今の感じ。
「あ、まぁ静くんが貸せばいっか!」
「…え、おれ?」
樹はさっきまで真剣に考えこんでいたのが嘘のように、静へと明るい視線を向けたのだった。
