空は風に恋をした

第7章 あの夜の答え

夜の空港デッキ。

照明に照らされた滑走路の向こうで、飛行機がゆっくりと動いている。

美空は手すりのそばに立ち、空を見上げていた。

今日はオフなのに、ここに来た。



あの人に、会うために。



そう思った瞬間、少しだけ胸が熱くなる。



足音が近づく。

「……美空さん」

振り向く。

颯太が立っていた。

少しだけ息を切らしている。

「すみません、待たせましたか?」

「いえ、私も今来たところです」

自然に出た言葉だった。



二人並んで、手すりにもたれる。

同じ方向を見る。

滑走路。

光。

動き出す飛行機。



「この時間、好きなんです」

美空が小さく言う。

「だな」

颯太も答える。

短い会話。

でも、それで十分だった。



少しの沈黙。

夜の空気が、やわらかく流れる。



「……あの」

美空が口を開く。

少しだけ迷って、それでも続ける。

「私——」

言葉が詰まる。

それでも、逃げない。



「颯太さんのこと、好きです」



静かな夜に、その言葉だけが落ちた。



颯太は、すぐには答えなかった。

少しだけ視線を落とす。

考えている。

その時間が、長く感じる。



やがて、顔を上げる。

「……ごめん」



その一言で、世界が止まる。



でも。

颯太は続けた。

「俺の話、聞いてほしい」



まっすぐだった。

逃げていない。



「ちゃんと、向き合いたいと思ってる」

ゆっくりと言葉を選ぶ。

「だから——」



一度、息を吸う。



「俺と、付き合ってほしい」



美空の目が大きく揺れる。

理解が、少し遅れて追いつく。



「……え?」

思わず声が漏れる。



颯太は少しだけ照れたように笑う。

「順番、おかしいよな」



その一言で、空気がほどける。



美空の目に涙が溜まる。

でも。

そのまま、笑った。



「……はい」



声が少し震える。

それでも、ちゃんと届く。



颯太が、そっと手を伸ばす。

少しだけ迷って。

それから——

優しく、手を取る。



指が重なる。

ゆっくりと絡む。



強くはない。

でも、確かだった。



「これからも」

颯太が静かに言う。

「一緒に空を見よう」



美空は、涙をこぼしながら笑う。



「はい」



夜の空港。

静かな光の中で。



二人の恋は、ようやく始まった。