機内の灯りは少し落とされていた。
ロサンゼルス行きの国際線。
長いフライトの途中だった。
眠っている乗客もいれば、まだ映画を見ている人もいる。
客室は静かな空気に包まれている。
窓の外には、雲海が広がっていた。
その上を、オレンジ色の夕焼けがゆっくり染めている。
まるで空が燃えているみたいだった。
颯太はその景色を、ぼんやり見ていた。
つい数時間前まで、日本にいた。
空港の出発ロビー。
奈々の泣き顔が、まだ頭から離れない。
奈々は、幼い頃からずっと一緒だった。
同じ公園で遊び、
すべり台を何度も滑って、
砂場で山を作って、
日が暮れて親に呼ばれるまで笑っていた。
同じ学校に通い、
高校二年の春。
颯太が告白して、二人は恋人になった。
あの頃の颯太は、
奈々とこのまま大人になるんだと
当たり前のように思っていた。
颯太にとって奈々は、
当たり前に隣にいる存在だった。
でも――
奈々はもう、
自分の隣にはいない。
これから先も。
颯太は小さく息を吐く。
そして、窓の外を見る。
夕焼けの空。
雲海がオレンジ色に染まっていた。
あまりに綺麗な景色だった。
颯太は小さく呟く。
「……奈々」
少し間を置く。
そして。
「幸せになれよ」
その瞬間。
視界が少し滲む。
一粒の涙が、頬を伝った。
夕焼けの光を受けて、キラリと光る。
―――
その瞬間を、美空は見てしまった。
キャビンチェックの途中だった。
通路を静かに歩きながら、乗客の様子を確認していく。
眠っている人。
映画を見ている人。
毛布にくるまっている人。
その時、ふと窓際の席に目がいった。
夕焼けの光の中で。
一粒の涙が、静かに落ちた。
美空はほんの一瞬だけ足を止める。
泣いている人を見ることは珍しくない。
長いフライトでは、よくあることだ。
それでも。
その人の表情は、少しだけ印象に残った。
泣いているのに。
どこか前を向いている。
美空はほんの一瞬だけその横顔を見る。
でもすぐに歩き出した。
仕事中だ。
まだ確認する席がいくつもある。
それなのに。
夕焼けの光の中で見たその横顔だけは、
なぜか少し心に残った。
美空は少しだけ迷う。
それから、そっと声をかけた。
「温かい飲み物、いかがですか?」
颯太は少し驚いたように顔を上げる。
夕焼けの光が、その横顔をやわらかく照らしていた。
それから、小さく笑った。
「……ありがとう」
ほんの短いやり取りだった。
それだけなのに。
なぜか、その人のことが少し気になった。
ロサンゼルス行きの国際線。
長いフライトの途中だった。
眠っている乗客もいれば、まだ映画を見ている人もいる。
客室は静かな空気に包まれている。
窓の外には、雲海が広がっていた。
その上を、オレンジ色の夕焼けがゆっくり染めている。
まるで空が燃えているみたいだった。
颯太はその景色を、ぼんやり見ていた。
つい数時間前まで、日本にいた。
空港の出発ロビー。
奈々の泣き顔が、まだ頭から離れない。
奈々は、幼い頃からずっと一緒だった。
同じ公園で遊び、
すべり台を何度も滑って、
砂場で山を作って、
日が暮れて親に呼ばれるまで笑っていた。
同じ学校に通い、
高校二年の春。
颯太が告白して、二人は恋人になった。
あの頃の颯太は、
奈々とこのまま大人になるんだと
当たり前のように思っていた。
颯太にとって奈々は、
当たり前に隣にいる存在だった。
でも――
奈々はもう、
自分の隣にはいない。
これから先も。
颯太は小さく息を吐く。
そして、窓の外を見る。
夕焼けの空。
雲海がオレンジ色に染まっていた。
あまりに綺麗な景色だった。
颯太は小さく呟く。
「……奈々」
少し間を置く。
そして。
「幸せになれよ」
その瞬間。
視界が少し滲む。
一粒の涙が、頬を伝った。
夕焼けの光を受けて、キラリと光る。
―――
その瞬間を、美空は見てしまった。
キャビンチェックの途中だった。
通路を静かに歩きながら、乗客の様子を確認していく。
眠っている人。
映画を見ている人。
毛布にくるまっている人。
その時、ふと窓際の席に目がいった。
夕焼けの光の中で。
一粒の涙が、静かに落ちた。
美空はほんの一瞬だけ足を止める。
泣いている人を見ることは珍しくない。
長いフライトでは、よくあることだ。
それでも。
その人の表情は、少しだけ印象に残った。
泣いているのに。
どこか前を向いている。
美空はほんの一瞬だけその横顔を見る。
でもすぐに歩き出した。
仕事中だ。
まだ確認する席がいくつもある。
それなのに。
夕焼けの光の中で見たその横顔だけは、
なぜか少し心に残った。
美空は少しだけ迷う。
それから、そっと声をかけた。
「温かい飲み物、いかがですか?」
颯太は少し驚いたように顔を上げる。
夕焼けの光が、その横顔をやわらかく照らしていた。
それから、小さく笑った。
「……ありがとう」
ほんの短いやり取りだった。
それだけなのに。
なぜか、その人のことが少し気になった。

