「美紀、文化祭の企画、どうする?」
放課後の教室で結がノートを広げながら聞いてきた。窓の外には桜が少しずつ散り、春の終わりを告げている。
「えっと…まだアイデアは浮かんでなくて…」
私は眉をひそめてノートに視線を落とす。友達の前ではしっかりした顔を作ろうとしても、内心は焦っていた。
「大丈夫だよ、美紀ならきっと素敵な企画ができるって!」
結の励ましに少しだけ安心する。
その時、クラスの人気者で文化祭実行委員も務める天野翔先輩が教室に入ってきた。
「お、二人とも何やってる?」
「企画のアイデアを考えてるところです!」
結と私は声を揃えて答える。
翔先輩は笑顔でノートを覗き込む。
「ふむ…面白いアイデアがいくつかあるね。美紀ちゃん、結ちゃん、もっと大胆に考えてみようか」
「大胆に…?」
結が目を輝かせる。
「うん!例えば教室全体をテーマパークみたいにしちゃうとか!」
私は思わず笑った。
「テーマパーク…無理かも…でも、ちょっと楽しそうかも」
翌日、部活の後、軽音部の練習を終えた私たちは文化祭の準備場所へ向かった。
「美紀、こっちの飾り付けを手伝って!」
結の指示に従って、ポスターを壁に貼ったり、風船を吊るしたりする。
すると、翔先輩が私たちの作業を見ながら近づいてきた。
「美紀、ちょっと相談があるんだ」
私はドキドキしながら振り向く。
「えっと…?」
「文化祭での軽音部の出し物、曲順を決めたいんだけど、意見を聞かせてほしい」
「う、うん…わかりました」
小さな声で答えながら、心臓が早鐘のように打つ。
しかし、その日の夜、少ししたすれ違いが起きる。
結が別の友達と文化祭の打ち合わせをしている間、私は一人でポスターを貼っていた。
「結、ちょっと手伝って…」
声をかけた瞬間、結は別の方向を見ていた。
「ごめん、美紀、今ちょっと…」
その言葉に、思わず胸がざわつく。
「うん…わかった…」
少し寂しい気持ちを抱えながらも、作業を続ける。
帰り道、結と少し距離ができたまま歩く。
「今日は、なんか…うまくいかなかったね」
「うん…」
照れくささと少しのもどかしさ。初めて友情が少しギクシャクした瞬間だった。
でも、私は心の奥で気づいていた。
「大丈夫、明日になればまた笑い合える」
桜吹雪が舞う校門を抜けながら、そう自分に言い聞かせる。
友情も恋も、笑いも涙も――すべてが少しずつ美紀の高校生活を彩り始めている。

