春の日




 バスは商店街の大通りを通って行った。

 眼鏡屋、判子屋、ブティック、学習塾。
 なんの事はない普通の道でも乃々は、友達とのバスのお出かけの道は全部が後で思い出になる気がした。
 
 ショッピングモールが近づくにつれて、両側を鮮やかな桜の木に挟まれた通りに入って、窓ガラスから桜吹雪が見えた。

 
「春だね」


 バスの2人席の座席に付いた手摺を取って、碧が口を開いた。


「そんな風にしたら汚れる。まったく。気づかないんだから。」


 桜吹雪に夢中で、窓ガラスに手を当てて顔を貼り付けんばかりにしていた乃々は、その言葉で我に返って照れ笑いをした。



 バスを降りてからショッピングモールに向かう道で、桜のアーチは続いていた。

 はらはら落ちる桜は本当に綺麗で、雪みたいで、風に舞っている景色は魔法がかかったみたいだった。

 歩きながら、水色に澄んだ空を見上げて、乃々は今日が春の日である事を嬉しく思った。