君と僕のすれ違い日記

 一分程ですぐに返事が返ってきた。
(亮介:いえいえ、そんな感謝されることは全然してないよ。彼氏さんと何事もなく別れられたなら良かった。)
(詩央里:そんなことないよ、だいぶ助かった。何度も言うけど、ありがとう。じゃあ、もう遅いからおやすみ。)
 亮介君から、おやすみと書かれた柴犬のスタンプが返ってきてLINEはそこで終わった。
 せっかくだから、もっと話したかったけど時間は11時を回っていた。
 今日は長い一日だったなあ、と今日を振り返る。
 駅で初めて亮介君と話せたと思ったら、瑛人が浮気していて、それを見た私が泣いちゃって、亮介君に慰めてもらって、瑛人と別れて、亮介君とLINEをした。
 辛いのか、嬉しいのか、不思議な気持ちになった。でも、亮介君と仲良くなれて私は純粋に嬉しい。それは確か。

 次の日、一限目は席替えだった。ついこの間席替えをした気がするのに。
 もしかしたら、亮介君と離れるかもしれない…。
 そんな想いを胸に、くじを引き番号の書かれた席に行った。
 残念ながら、周りには亮介君はいない。
 私の席は、廊下から三列目の先頭。亮介君は運動場側の先頭だった。
 はあ、と静かにため息を吐く。せっかく話せたのに、席が離れるなんて...。
 でもやっぱり、プリントを配る時にチラリと亮介君を見てしまう。

 放課後、私は雨が止むのを席に座って、静かに待つ。傘を忘れてしまったのだ。朝は晴れていて、天気が良かったのに今は土砂降り。
 クラスには誰もいなかった。多分、中学最後の部活を楽しんでるんだろう。私も部活に入れば良かったと少し後悔する。玲奈も部活だからいない。
 窓の外を見ても、止む気配はない。宿題も終え、やることがなくなったから帰ることに決めた。雨にはだいぶ濡れるけど、駅までは走れば5分で着くはず。
 憂鬱な気持ちのまま、トボトボと歩き、靴を履き替えていると肩を叩かれた。
 静かに後ろを振り向くと、亮介君がいた。
「あっ、入山君。」
 体の温度が一気に高まる。
「ごめん、持ってたらあれなんだけど傘ある?」
 優しい表情で私の顔を見る。
「えっ、あっ。」
 上手く答えることができなかった。
「もし、なかったら2本あるから貸すよ。」
「えっ、いやいや、そんな大丈夫だよ。」
 それはダメだよ、と言って亮介君は白い傘を私に渡した。多分、日傘と兼用の傘だと思う。新品みたいにきれいだから、扱いが良いんだろうな。
 せっかく亮介君が傘を貸そうとしてくれているのだから、借りるべきなのか私は何度も自問自答した。
「ほんとにいいの?」
 借りなければ、びしょびしょで電車を乗ることになり、それはさすがに恥ずかしいなと思い、借りることにした。
「うん。使って。」
 優しく亮介君はそう言った。
「ありがとう。ほんとに助かった。」
 いえいえ、と亮介君は照れくさそうに首を小さく振った。そんな仕草がとても可愛く見える。いや、可愛いのかな。

 駅までの帰り道、たくさん話ができた。最近の成績だとか、趣味とか。好きな人のことを知る、この時間が何よりも幸せだった。
 亮介君は、傘をまた明日返してと言ってくれた。多分、私が駅からも濡れないように。その親切心が私の亮介君への好きをを進めた。
 でも私は電車での会話が頭から離れなかった。

 亮介君は、ふいにスマホを取り出しイルカの写真を見せた。
「イルカ?」
「うん。」
 なぜか亮介君は顔を赤らめてそう言った。
「イルカかわいいよね。これどこの水族館?」
「海遊館。ねえ、あのさ。」
 私は静かに頷いた。
「海遊館さ、今度一緒に行かない?」
 えっ、チラリと横を見ると亮介君は恥ずかしそうだった。まさか...。
「行きたい。」
「ほんとに?」
 目を輝かせながら亮介君はそう言った。
「うん。私も一緒に行きたい。私はいつでも空いてるよ。今週末でも。」
 なんとなく気がついていた気がする。私と亮介君は両思いじゃないのかって。でも今、それが確実だと思いた気がする。
「ほんと良かったー俺も今週末空いてるからさ、良かったら。」
 亮介君はそう嬉しそうに言った。
「うん。めっちゃ楽しみ。また、電車の時間とかあとでLINEするね。」
「ありがとう。」
 そう亮介君が言うと、ちょうど亮介君の最寄駅に着いた。
「じゃあ、また明日。」
「うん、バイバイ。」
 お互いに手を振りながらさよならをした。