魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意

彼のふざけた雰囲気が一気に真面目なものになる。
鋭い視線は恐ろしく、ヴィクトールを射抜いていた。
しかし自分の娘を殺せとはどういうことなのだろうか。


『……なぜ』

『それが彼女の望みでもあるからだ』


サンドラクト国王が何を言っているのかヴィクトールには理解できなかった。
彼女とはシャルレーヌのことではなさそうだ。


『我々にもそれは不可能だった。もしシャルレーヌがお前に心を開くようなことがあれば……』


彼は悲しげに見えた。


『まぁ、とにかくシャルレーヌを頼む! 見目もよいし、茶目っ気もある。ただ少し……その、変わっているだけで……少しな……』


次第に言葉に詰まって汗ばんでいくサンドラクト国王を横目に、ヴィクトールは考えを巡らせていた。
その後もヴィクトールが微妙な表情をしていると、次第に国王は必死になっていく。


『お願い! ほんとお願いっ、一生のお願いだから!』

『…………』

『お願いだから娶ってぇ……』


サンドラクト国王の弱々しい声が聞こえた。
それにヴィクトールは気がつかないふりをするしかなかった。

その他にもサンドラクト国王といろいろと話をすることができた。
彼も歳のせいで落ち着いてきたと言って皮肉を込めて笑っていた。
というよりもヴィクトールの魔法を知ったのに対等に接してくれたことが嬉しかったのかもしれない。

最終的に承諾したのは案外、サンドラクト国王が人間らしく好ましく思ってしまったからだ。