魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意

ヴィクトール自身も、たまに闇魔法がなんなのかわからなくなる時があった。
闇魔法は未解明な部分も多く、それ故に畏怖されていた。
その魔法を持つ者は己が闇に飲み込まれて、消滅してしまうことがほとんどだそうだ。
実際、ヴィクトールも闇魔法が別の生き物だと感じることがある。
けれどそれが存外、仲間のようで居心地がいい。

幸いにも魔法の実力主義のナリニーユ帝国において、この魔法は大いに役に立った。

他の兄弟たちに数えきれないほどに殺されそうになったことがあった。
それを闇魔法がヴィクトールを守り、返り討ちにしてくれた。
ヴィクトールに手を出せばどんな目に遭うのかわかると、自然と誰も近づかなくなっていた。
母の魔法の影響か毒殺とは無縁なのが幸いだ。

いい顔をして近づいてきたと思いきや、すぐに手のひらを返す。
心もすっかりと痛みに慣れた頃には、すっかりと人を信用できなくなった。
それは母も同じ。自らの毒魔法を生かせるように研究をしていた。
何があっても折れず、強かで逞しい母に見習い、ヴィクトールもなかなかにずる賢い性格になった。

それから母と同じような境遇で爪弾きにされていたオノレとモルガンと出会った。
彼らを放っておくことができずにそばに置いていた。
今でも側近としてそばにいて、ヴィクトールのために動いてくれている。
唯一信頼している人物だといっても過言ではない。