魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意

(別に食べものは食べなくても問題ないのですけれど)

何かを言いたげに口を開いたり閉じたりを繰り返している医師たち。
申し出をすべて断っているととにかく食べものだけでもと、ルイを連れて部屋から出て行った。

(はぁ……やっと静かになりましたわね。これで少しは休めそうですわ)

瞼を閉じて体を休んでいると、どのくらい時間がかかっただろうか。
遠くから足音が響く。
欲をいえば、もう少し休みたかったが仕方ない。

(次から次へと……たまりませんわね)

シャルレーヌは小さく咳き込みつつも体を起こす。
ルイとロミの気配がないということは、そこまで時間は経っていないのだろう。
ノックに答えるように返事をすると光の中に見覚えのあるシルエットが見えた。


「……具合は?」

「こほっ……先ほどは申し訳ありません」


シャルレーヌが立ち上がり、挨拶をしようとするが彼は片手で制する。
そのままベッドに横たわりつつ、シャルレーヌは瞼を閉じた。


「医師から話を聞いた。彼女たちが作ったものしか口にしないと」

「当然ですわ。それにわたくしたちには魔法は使えませんから。ルイは紅茶を淹れるだけで一苦労ですわ」


ヴィクトールは不機嫌そうな表情で眉を寄せた。


「サンドラクト王国でもそうなのか?」

「はい、そうでございます。サンドラクト王国では、いつ殺されるかわかりませんから」

「…………」

「ここでも誰が何をしてくるかわかりません。信頼する者は選ばなければ、すぐに死にますわ」


ヴィクトールの何か言いたげに開かれた唇はそっと閉じてましまう。
二人の間には重たい沈黙が流れていた。