魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意

モルガンの額には冷や汗が滲む。
ヴィクトールの背からは、煙に巻かれた漆黒の腕のようなものが現れて異様なオーラを放っていた。
空気が一気に緊張感のあるものに変わった。
それを見たシャルレーヌは目を輝かせた。

(ふふっ、早とちりしすぎたみたいだわ。まだまだ楽しめそう。それにしてもやっぱりあの魔法……素敵ね)


周囲の視線が彼らに集まるなか、シャルレーヌは彼の闇魔法に心を奪われていた。
心の中でわくわくしつつも、それを隠すように微笑んでいると、一瞬だけヴィクトールの紫色の瞳と目が合ったような気がした。
けれどすぐに視線が逸れてしまう。

(何かしら……? もしかしてわたくしの反応を見ていた?)

それはそれで楽しいではないか。
微笑みながら様子を見ていたシャルレーヌとは違い、周囲の緊迫した様子は続く。


「き、昨日から動物たちの様子がおかしかったんです! 城周辺から動物がいなくなってしまって……っ」

「…………」

「今も鳥たちも返事をしてくれずに……ぐっ!」