魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意

エマニュエルは不機嫌な顔を隠すために扇子を取り出した。
口元を隠しつつも顔を背けた。


「だけど本当に体調が悪いのではないでしょうか。飲まず食わずで寝込んでいるのでは?」


ベアトリスはそう言ってエマニュエルに軽蔑した視線を送る。


「折角、サンドラクト王国との関係を良好なものにこんなことをするなど信じられません」

「説教はたくさんよ。やめてちょうだい」

「…………」


ナタリーは興味がなさそうにオレンジ色の毛先を指で遊びいたずらしている。


「あのくらい普通よ。それにただ見ていたあなたたちだって同じでしょう? 誰も手を差し伸べなかった。違う?」


エマニュエルの問いに三人は何も答えなかった。
彼女の言っていることは事実。新しい妃を警戒して観察していたのだ。


「それに随分と計算高い女のようだし、思わぬライバルになるかもしれないわよ」

「ありえませんわ」

「ここにいるということはみんな後に引けない理由があるはずよ」


空気はどんどんと張り詰めていく。
それは魔法が使えないシャルレーヌには正妃になる資格がないことがわかっている。
だけど妃でライバルである以上、警戒せざるを得ないのだ。
彼女たちは妙な胸騒ぎを感じながら静かにカップを持ち上げた。
正妃争いが本格化すれば、こうして顔を合わせることもなくなるだろう。
今は腹の探り合いだ。そして一つのミスが命取りとなる。

その後、衝撃的な光景を目にすることになるとは思わずに……。