魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意

「あの門番はその場で処罰されたそうですわ」

「あら、可哀想に……運が悪いのね」

「エマニュエル様、あなたのせいでしょう?」

「わたくしは少し〝お願い〟しただけよ。それにあんなに放置する予定じゃなかった。いつもならモルガン様辺りがすぐに気づくでしょう?」

「それもそですわ。陛下も同じように思ってくださったのかしら」

「それに魔法が使えないなんて、この帝国で生きていけるわけないじゃない。現実を教えてあげただけよ」


ナリニーユ帝国の貴族たちは、ほぼすべての人間に魔力が備わっている。
平民の大半は魔法が使えないが魔導具に頼っていた。

自分の属性魔法ではなくとも魔力を流し込めば動く便利な道具を魔導具と言う。
魔導具を使えなければ灯りをつけることも水を出すこともできない。
魔石も簡単に手に入る。

だが、原始的な生活を続けているサンドラクト王国の人間は困惑するはずだ。
全部自分の手を動かして、時間を無駄にするなんてありえない。
これだけ便利で豊かに暮らせるのもすべて魔法のおかげなのだ。


「持参金もないそうよ。あの脳筋な国王が考えそうなことよね。しかも侍女と従者が二人だけなんて……本当に王女なのかしら?」

「王女といってもあのサンドラクト王国の王女ですわ。何もしなくても暴力沙汰や問題を起こしていなくなるのではないかしら」

「それに大量の荷物も無駄に荷馬車に詰めてきて……魔力がないと何もできずに大変よ」

「すぐに根を上げて国に帰りますわ。サンドラクト王国出身でしたらナリニーユ帝国では暮らしにくいでしょうから」


こうして秘密のお茶会は続き、夜がふけていった。


次の日、エマニュエルがシャルレーヌの部屋に浮かべている盗聴器に耳を傾けても呼吸音や寝言さえ聞こえない。
部屋の中で休んでいるそうだが、そうは思えなかった。  

侍従に体調が回復したら、お茶会に参加するように言っていたはずなのに、連絡すらないとはどういうことだろうか。
アナベルとエマニュエルは苛立ちを抑えるのに必死だった。