魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意

「その力だけは、本当に素晴らしいわね」

「エマニュエル様がわたくしを褒めるなんて……今日は空から槍でも降るのかしら」

「……正妃争いもあんたがいなければ楽だったのに。ナタリーは魔法にしか興味のないお子様よ。よく辺境伯はあの子を正妃候補として寄越せたわね」

「魔法の強さで選ばれるのだから、仕方ありませんわよ」

「ベアトリスはお堅くて大っ嫌い。自分が正しいって思っているの。見ているだけで虫唾が走るわ。ただでさえ水魔法を使うってだけでも気に入らないのに……」

「ふふっ、社交界でも実際はエマニュエルとわたくしとの一騎打ちだと言われていますもの」

「そうよねぇ……今回、あの子が来てあなたが落ちぶれてくれたら大満足なんだけど」

「それはお互い様ですわ。わたくしが正妃になるのだから邪魔しないでくれません?」


二人は決して目を合わせることはなかった。
ただ蝋燭の火が揺らめいているだけで、まとう空気は張り詰めたものだ。


「魔法も使えない目障りな奴は早々に消えてもらわないと。厚かましい性格みたいだし」

「陛下に助けていだいて、夜に部屋に来ていただきたいなんて……。まだ、わたくしたちの部屋にもいらっしゃったことがないというのにっ!」


アナベルの持っていたカップが粉々に砕け散ってしまう。
しかし笑顔で指でガラス片をなぞると、カップの残骸が一瞬で端に山積みになった。