「アナベル……」
ヴィクトールの視線の先、そこには教会のシスターの格好をしているアナベルの姿があった。
捕らえる前に自ら現れた彼女は目の下に深い隈が刻まれている。
艶やかだったプラチナシルバーの髪は手入れをしていないからか乱れて絡まっていた。
侍女たちが次々と離れたことが原因だろうか。
(このタイミングで顔を出すなんて、彼女はどういうつもりなのかしら)
アナベルはシャルレーヌを鋭く睨みつけていたが、ヴィクトールが庇うように前に出た。
それと同時にテネブルもだ。
テネブルが敵意をむき出しにした瞬間、闇魔法への恐怖からか周囲にいた人たちが一気に距離をとった。
ヴィクトールがテネブルを抑えようとしても、尖った影の触手を引こうとはしない。
テネブルはシャルレーヌに絡みついて、これ以上近づいて次くるなとアナベルを牽制していた。
シャルレーヌはテネブルにグイグイと押されて、ヴィクトールに寄り添うような形になってしまった。
その姿を見て拳を握り込むアナベル。
こうして見ると彼女は完全に敵になってしまったかのようだ。
(わざわざわたくしに毒を盛るためだけに、会場にいらっしゃったのかしら……)
だとしたら自らトドメを刺すようなものだろう。
自分がアナベルの立場ならば、少なくとも噂が出回っている間は部屋で大人しくしているだろう。
それを我慢できずに出てきて、なおかつシャルレーヌを毒殺しようとした。
それほど彼女にとって我慢できないことだったのかもしれない。



