魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意

(この玉はただの飾りなのかしら。ふふっ、何もわからないわ)

遠くの空にはカラスが気持ちよさそうに羽を広げて飛んでいるのが見えた。


「わかってはいたけれど歓迎されていないわねぇ」

「……先ほどの門番は殺しますか?」

「あの玉をすべて壊してきます」

「ダメよ。こんなところで問題を起こしたら、警戒されて楽しめなくなってしまうじゃない。大人しくしましょう」


とは言ったものの徐々に限界は近づいていた。
何週間もの長旅に加えて、強い日差しはシャルレーヌを着実に蝕んでいく。

(困ったわね。このままだとご挨拶もできずに倒れてしまいそう)

シャルレーヌの視界がぐにゃりと歪んだ。
体からどんどんと力が抜けていく。
そのまま倒れてしまったのをロミとルイがすぐさま支えてくれた。


「──シャルレーヌ様っ!?」

「しっかりなさってください! シャルレーヌ様」

「ゴホッ、コホ……!」


二人が名前を呼ぶ声が遠くなっていく。

(ふふっ……このまま太陽に焼かれてみるのも悪くないわね)

どのくらい時間が経ったのだろうか。
するとシャルレーヌの視界に影が差し込む。
闇のような黒髪とアメジストのような紫色の瞳が見えたような気がした。
誰かの影なのか人なのかすらわからない。
次第に体が持ち上がっていき、シャルレーヌを一瞬だけ包み込んだ。