【完結】魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意

アナベルはテネブルをシャルレーヌの密会相手だと勘違いしていた。

(ルイとロミしか連れてきていないし、まだロミと噂が立つのならわかるけれど……)

考えているとテネブルのひんやりとした感触が手に触れた。
まだ部屋にヴィクトールがいることを忘れていたシャルレーヌは彼に視線を送る。
アメジストのような瞳がシャルレーヌを映し出していた。
真っ黒な艶のある髪と端正な顔立ちは彫刻のようだ。長いまつ毛を眺めながら、シャルレーヌも彼を見つめ返す。そのまま黙っていると、しばらく沈黙が流れる。


「…………美しいな」

「……!」


ヴィクトールの薄い唇から漏れた言葉に驚く暇もなく、横から光が漏れている影響なのか、咳き込んだことで視線が逸れてしまう。


「ゴホッ……」

「無理をさせた。すまなかった」

「…………」


二人きりだからなのか、彼から素直な言葉が漏れる。
テネブルが心配そうにシャルレーヌを覗き込んでからカーテンを閉めるために動いてくれた。
再び部屋は暗闇に包まれたことで呼吸が落ち着いてくる。
ヴィクトールはテネブルといるおかげで夜目がきくのだろう。
彼はサイドテーブルに置かれたウォーターポットを手にとると、置かれたグラスに注いだ。
そしてシャルレーヌに渡す。


「まぁ……随分とお優しいのですね」

「今は機嫌がいいからな」

「あら、がっかりですわ。わたくしのことを想ってはくれないのですね」

「…………」