魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意

一方、ナリニーユ帝国では──。


天井を彩る絵画とシャンデリア。豪華絢爛なダイニングテーブルには四人の妃が並んでいた。
空気は張り詰めており、一番の上座には黒曜石のような艶やかな黒髪を持ち、豊満な胸を露出させている女性がいた。
少し長い前髪からは紫色の鋭い眼光が覗く。


「こんな時間に珍しいですわね。ヴィクトール陛下、お話とはなんでしょうか」


妃たちは目の前に置かれた美しく彩られた料理には目もくれず、皇帝に熱い視線を送っていた。
ワイングラスを静かに置いたあとに、低い声が静まり返った部屋に響く。


「急遽、サンドラクト王国から五番目の妃を迎えることとなった」


そう言ったヴィクトールはめんどくさそうに瞼を閉じた。
彼女たちの反応がわかっているからだろう。
そして予想通り〝サンドラクト王国〟という国名に彼女たちは我慢できずに声を上げた。


「あんな乱暴で礼を知らない王国の王女を迎え入れるおつもりですか!? 彼らは一切、魔法を使えないのですよ……!」

「そうです! わたくしは幼い頃、サンドラクト王国の王女にパーティーで殴られそうになったことがありますのよ?」

「その方なら私も知っています。カリマ、という名前では? まるで殿方のような口調でした」

「…………最悪。魔法、使えない。存在価値なし」