零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――

さくら祭りの閉会式で、校長は壇上に立ち、相変わらず穏やかな顔で言った。

「本日の地域交流会は、大過なく終了した」

俺は拍手しながら、本気で言ってるのかと思っていた。

時計台裏で黒い封筒が飛び、祭りのど真ん中で模範生が逃げ、俺は射的台から鍵箱を撃ち落とした。どう考えても“大過なく”の定義がおかしい。

隣で白鷺がひそひそ言った。

「強い言葉だねえ。“大過なく”」

「便利な言い換えだな」

九条が冷たく返した。

「そうでもしなければ、学園の表看板が剥がれる」

火村はまだ興奮していた。

「でもさ、紙吹雪、めちゃくちゃ受けてたよ!あのおじさん、『学園の粋な演出だ』って言ってた!」

「お前の仕掛けを学校公認にするな」

「俺の仕掛けじゃなくて、有馬の一発込みで完成した芸術なんだけど?」

「だから芸術にするなって」

大河内が屋台の紙袋をのぞいて、低く言った。

「……たこ焼き、冷める」

「そこかよ」

祭りの客たちは、ほんとに何も知らない顔で笑っていた。

「最後の紙吹雪、きれいだったわねえ」

「さすが鷹ノ宮さんだね」

「時計台の向こう、急に通れなくなったのも安全誘導かね」

聞こえてきた言葉の一つ一つが、妙に平和だった。

真砂先輩の名前は、どこにも出なかった。

外から見れば、今日の鷹ノ宮学園は、礼儀正しくて手際のいい名門男子校のままだった。