零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――

俺は隙間から中をのぞいた。

壁一面の差し込み式交換台。黒電話。真鍮の打鍵器。紙テープを吐き出す古い通信機。地図が何枚も貼られていて、赤い糸で線が引いてある。レトロどころか、昭和がそのまま地下に避難してきたみたいな部屋だった。

その真ん中に、真砂先輩が立っていた。

机の上には、黒い封筒が開かれていた。中から半分のぞいた紙に、地下の見取り図みたいな線が見えた。もう一枚は、暗号表っぽい細かい記号の表だった。

真砂先輩は黒い受話器を耳に当てたまま、まっすぐ前を向いていた。

「地下区画の見取り図と、現行の校外連絡用暗号表です」

喉の奥が、ひやっとした。

本物だ。

黒い封筒だ。

「受け渡しは明日。町のさくら祭りで」

白鷺が、俺の袖をぎゅっとつかんだ。

真砂先輩は続けた。

「人が多いほど都合がいい。詳しい場所は予定通り、川沿いの時計台裏で――」

九条が扉に手をかけた。

次の瞬間、俺たちは一気に中へ踏みこんでいた。

「真砂先輩!」