問題は、真砂先輩が怪しいとわかったところで、俺たちが急に優秀な追跡班になったわけじゃないことだった。
閲覧室を出ると、ちょうど廊下の向こうを銀の生徒会章が横切った。真砂迅先輩だった。姿勢はきっちり、歩幅は一定、相変わらず歩く校則全文みたいだった。
「今だね」
白鷺がすぐ言った。
「待て。距離を取れ」
九条もすぐ言った。
「待ってるうちにいなくなるだろ」
「近づきすぎると向こうに悟られる」
「お前は遠すぎるんだよ」
「火村、変なものを出すな」
「まだ出してない!」
「鞄の中で金具が鳴った」
「聞こえるの!?」
大河内が低く言った。
「……行く」
「もういい、行こう」
俺たちは、まとまりきらないまま真砂先輩のあとを追った。
真砂先輩は本校舎の回廊をまっすぐ進み、旧資料棟へ続く渡り廊下を抜け、そのままさらに奥の旧校舎西廊下へ入っていった。あのへんは昼でも人が少ない。夕方になると、なおさら静かだった。
「白鷺、前に出るな」
「出てない出てない」
出てた。
「火村、その帽子なんだ」
「後方確認帽」
「しまえ」
その横で大河内が柱に寄ろうとして、柱より目立っていた。
「豪、隠れてるつもり?」
「……つもり」
「正直でよろしいけど隠れてはない!」
俺はつっこみながらも、真砂先輩から目を離さないようにした。けど、九条の合図と白鷺の動きが噛み合わない。火村の鞄は時々かちゃっと鳴るし、大河内はでかいし、俺は俺で、どの距離が正解かいまいちわからなかった。
真砂先輩が旧校舎西廊下の角を曲がった。
俺たちも数秒遅れて曲がった。
そして、全員で止まった。
「……え?」
突き当たりだった。
長い廊下の先には、古いガラスの展示戸棚と、創立期の写真が入った額がいくつか、細い窓、壁灯、それだけだった。左右に曲がる場所も、開いた扉もない。
なのに、真砂先輩の姿だけがなかった。
「消えた!?」
白鷺が声を裏返らせた。
「うるさい」
九条が即座に切った。
「いやでも、今のは普通に消えただろ!」
「普通ではないから追っている」
「そこを平然と言うなよ!」
火村が展示戸棚を見た。
「隠し扉とか?」
「いきなり当たりを引くな」
俺が言ったそのとき、廊下の反対側から足音が近づいた。見回りか、上級生か、とにかくまずい。
「こっち」
九条が低く言って、すぐそばの旧音楽準備室に俺たちを押しこんだ。
閲覧室を出ると、ちょうど廊下の向こうを銀の生徒会章が横切った。真砂迅先輩だった。姿勢はきっちり、歩幅は一定、相変わらず歩く校則全文みたいだった。
「今だね」
白鷺がすぐ言った。
「待て。距離を取れ」
九条もすぐ言った。
「待ってるうちにいなくなるだろ」
「近づきすぎると向こうに悟られる」
「お前は遠すぎるんだよ」
「火村、変なものを出すな」
「まだ出してない!」
「鞄の中で金具が鳴った」
「聞こえるの!?」
大河内が低く言った。
「……行く」
「もういい、行こう」
俺たちは、まとまりきらないまま真砂先輩のあとを追った。
真砂先輩は本校舎の回廊をまっすぐ進み、旧資料棟へ続く渡り廊下を抜け、そのままさらに奥の旧校舎西廊下へ入っていった。あのへんは昼でも人が少ない。夕方になると、なおさら静かだった。
「白鷺、前に出るな」
「出てない出てない」
出てた。
「火村、その帽子なんだ」
「後方確認帽」
「しまえ」
その横で大河内が柱に寄ろうとして、柱より目立っていた。
「豪、隠れてるつもり?」
「……つもり」
「正直でよろしいけど隠れてはない!」
俺はつっこみながらも、真砂先輩から目を離さないようにした。けど、九条の合図と白鷺の動きが噛み合わない。火村の鞄は時々かちゃっと鳴るし、大河内はでかいし、俺は俺で、どの距離が正解かいまいちわからなかった。
真砂先輩が旧校舎西廊下の角を曲がった。
俺たちも数秒遅れて曲がった。
そして、全員で止まった。
「……え?」
突き当たりだった。
長い廊下の先には、古いガラスの展示戸棚と、創立期の写真が入った額がいくつか、細い窓、壁灯、それだけだった。左右に曲がる場所も、開いた扉もない。
なのに、真砂先輩の姿だけがなかった。
「消えた!?」
白鷺が声を裏返らせた。
「うるさい」
九条が即座に切った。
「いやでも、今のは普通に消えただろ!」
「普通ではないから追っている」
「そこを平然と言うなよ!」
火村が展示戸棚を見た。
「隠し扉とか?」
「いきなり当たりを引くな」
俺が言ったそのとき、廊下の反対側から足音が近づいた。見回りか、上級生か、とにかくまずい。
「こっち」
九条が低く言って、すぐそばの旧音楽準備室に俺たちを押しこんだ。



