零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――

寮の起床ベルは、目覚ましというより襲撃だった。

まだ外は青いだけで、朝っていうより夜の続きだった。学園時間では五時五十八分。現実の時計だと五時五十六分。たった二分のくせに、その二分がやけに腹立たしかった。

南離れの廊下に出ると、白鷺がぴしっと制服を着て立っていた。

「おはよ、有馬。顔が終わってる」

「お前は朝から元気すぎて腹立つ」

「褒め言葉?」

「違う」

その横で、火村は工具箱みたいな鞄を抱えてあくびをしていた。

「俺、夢の中ではもう二回くらい卒業してたのに……」

「お前の一年早すぎるだろ」

九条は眠そうな気配すらなく、いつも通りきっちりしていた。

「騒ぐな。頭に響く」

「頭に響くのは眠そうな人間の台詞なんだよ」

最後に大河内がぬっと出てきた。寝癖が片側だけ立っているのに、顔は真顔だった。

「……寒い」

「それだけで済むのかよ」

五人そろって本校舎へ向かった。朝の回廊はしんとしていて、窓の外の木立だけが白く煙っていた。足音がやけに響く。いや、俺たちの足音だけが響いていた。向こうから歩いてきた上級生は、石畳の上でも廊下でも、信じられないくらい静かだった。

「見た?今の」

白鷺がひそひそ声で言った。

「見た。歩いてるのに歩いてないみたいだった」

「幽霊かな」

「それなら入学先を間違えた以前の問題だろ」