零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――

南離れは、本校舎のきっちりした白さとは少し違っていた。
古い木造校舎を手直ししたみたいな建物で、手入れはされてるけど、どう見てもメインじゃない。窓枠は濃い茶色で、廊下の床はつやつやしてるのに、空気だけ少し古かった。

「ますます誤配属っぽいんだけど」

「大丈夫大丈夫」

白鷺はなぜか自信満々だった。

階段の手前まで来たところで、白鷺が急に表情を変えた。どこから出したのか案内係みたいな腕章まで巻き、声色まで変える。さっきまでの軽い調子が消えて、ほんとに別人みたいな落ち着いた声になった。

「有馬直君ですね」

「えっ、はい」

「零班担当教官は形式を重んじます。入室の際は右拳を胸に当て、『規律と忠誠を』と述べてから礼をしてください」

「え」

「零班だけの慣例です」

「そんなの聞いてないけど」

「零班だけですから」

この学校なら、ありそうで困った。
白線とか学園時間とか言ってる学校だ。零班だけ変な挨拶があっても、もうおかしくない気がしてくる。

「ほんとか?」

「もちろんです」

白鷺は真顔でうなずいた。

「初手が大事ですよ」

「うわ、嫌だなその学校」