君の指輪と海のカフェ

湊は、空になったカップを下げようとして、そっと美波の左手に触れた。

そこには今、何もはめられてはいない。

けれど、湊の指先は迷うことなく、彼女の左手薬指の付け根を、愛おしそうにそっとなぞった。

「……店主さん?」

驚いて顔を上げる美波に、湊は穏やかな、けれどどこか祈るような視線を向ける。

「ここには、目には見えない指輪があるんです。僕たちが、ずっと遠い昔に交わした約束の印が」

美波は、触れられた指先から伝わる温もりに、心臓がトクンと跳ねるのを感じた。
しかし、記憶の断片は一つも浮かんでこない。