君の指輪と海のカフェ

湊は、その言葉の隣に新しくペンを走らせた。かつて彼女が震える手で書いた
「明日の私は、あなたのことを覚えていますか?」

という問いへの、彼なりの答えを。

『大丈夫。何度忘れても、僕が君に恋をするから』

二人は顔を見合わせ、穏やかに笑い合った。

窓の外では、あの時と同じ海が静かに凪いでいる。もう、寄せては返す波に記憶がさらわれることはない。

ノートの最後の一ページ。そこには二人の筆跡で、力強くこう刻まれた。

「終天ともに」 


閉じられたノートの表紙には、二人の手が重なり、その薬指には夕陽を反射する本物の銀色の輪が、静か
に光を放っていた。